年末恒例のミステリランキングを眺めていると、作家たちの変遷に考えこむ。「このミステリーがすごい!」の最初のベストワンは船戸与一の「伝説なき地」だったが、彼が亡くなってから久しい。原尞もまた、わずかな、しかし良質のハードボイルドを遺して逝ってしまった。生きていてもほぼリタイア状態の人も多いわけで……(それを考えると辻真先さんと皆川博子さんは驚異的)
そんななか、有栖川有栖はすごい。デビュー35周年。臨床犯罪学者の火村英生と推理作家の有栖川有栖(作家と登場人物が同名なのはエラリー・クイーンに倣っている)のシリーズはもう30冊近い。
そのなかでも、やはりクイーンに倣った国名シリーズは11冊目。いよいよ日本の登場だ。というより、徹底して京都という街を活写。
舞鶴の海岸にたたずんでいる青年。通りかかった女性教師に、彼は自分の名前すら言うことができない。はたして記憶喪失なのか。持っている日本扇がヒントになって6年8ヶ月ぶりに実家に帰った彼を、家族は「人が変わったよう」と驚く。引っ込み思案で暗い子だったのに、すっかり快活になっていたのだ。
敷地内で起こる連続殺人。そして青年は姿を消す……
有栖川有栖には、この火村が主人公の作家アリスのシリーズと、江神二郎が主人公の学生アリスのシリーズがある。どちらも必ず読者を楽しませてくれるのだが、有栖川有栖と同学年であるわたしとしては、これからも長く長く書き継いでくれることを切に願っている。
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