Vol.07「もう一つの鍵」はこちら。
今回の最大の特徴は、なんといっても“爆殺”という派手な方法をとっていること。犯人は大会社の創業者の御曹司。血のつながっていない叔父によって会社が身売りされそうになっていることに腹を立て、化学の知識を利用して爆弾を叔父の葉巻箱に仕込み……でもね、設定だけ考えるとちょっと疑問も。
この御曹司は気ままに研究や遊びをつづけ、身売りにあたっては相応の報酬が与えられることになっている。結果的に彼は叔父を殺すことで社長のポストを手に入れ、無邪気に喜んでいるが、社長の椅子ってそんなにほしいものなのだろうか。自由なバガボンドでいるよりもエスタブリッシュメントでいる方を選択する気持ちがわたしにはわからない。あ、そんなことを地方公務員に言われたくはないですか。そうですか。
まあ、愛人関係にあり、しかし最後には使い捨てにしようとする社長秘書(「禁断の惑星」のアン・フランシス!)がかなり魅力的なので、そっちならわかるんだけど。ラストで、コロンボは秘書についていいセリフをかますしね。
原題は「Short Fuse」。英語では「かんしゃく持ち」という意味でも使われるのだとか。ヒューズとのダブルミーニングになっているわけ。その、短気な御曹司を演じたのは、「二枚のドガの絵」のキム・ハンターに続いてこれまた「猿の惑星」でおなじみのロディ・マクドウォール。小狡そうな動きがセクシーですらある。
彼には熱狂的なファンがいて、永六輔の娘である千絵などはそのことを常に広言していたっけ。野沢那智のファナティックな吹替ともあいまって、精神のどこかが脆いボンボンをロディは達者に表現している。その脆さゆえに、コロンボの最後の罠が有効だったとも言える。
にしても、ロープウェイという密室を利用したコロンボの策略はかなりリスキー。今回は要するに「かんしゃく持ち」VS「はったり屋」の対決だったわけだ。
Vol.09「パイルD-3の壁」につづく。
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