「羅生門」「偽れる盛装」「雨月物語」「地獄門」……京マチ子主演作品の数々。世界的にも評価が高く、彼女が大女優であることは疑いない。でもこの評伝を読んで、自分が彼女のことをあまりにも知らなかったことに驚く。
彼女は結婚したことがあるんだろうか。
彼女はどんな男性と(あるいは女性と)つきあっていたのか。
ほら、あなたも知らないでしょう?原節子であれば、謎に包まれていることで神格化されたが、京マチ子の場合はそんなふうでもない。
若いころは、当時としては大柄で、肉感的な肢体と美貌でヴァンプ(毒婦)女優と呼ばれていたのが、前述の名作群によって評価は一変。演技派としても知られるようになった。
わたしがリアルタイムで彼女の作品を観たのは「金環蝕」以降でしかない。「華麗なる一族」も後追い。あの、万俵家の執事、というか家庭教師、はっきり言えば愛人役はすごかった。
市川崑が角川春樹と組んだ「犬神家の一族」において、松子役のファーストチョイスは京マチ子だったことを初めて知った(実際には高峰三枝子が演じた。のちに古谷一行が金田一を演じたテレビドラマでは松子を京マチ子が演じています)。
この書で特に強調されているのは、眉によって印象を操作するテクニックに彼女が長けていたこと。なるほど、大女優というのはすごいものだな。若尾文子が復権したように、彼女も絶対に再評価されるはずだ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます