「刈屋の梨」篇はこちら。
「ウチの猫ちゃんが足をケガしたんで包帯買いにいったんですー」
「伍長、それでついでに笑楽へ行ったと」
「そうなんですー」
「そしたらいつも頼んでたしょうゆラーメンがメニューから消えてたと」
「でもつくってくれました」
「そういう客になりたくないんじゃなかったでしたっけ?」
「そうなんですけどー」
……そうなんです。麺の固さがどうとかはもちろん、メニューに載っていないのをオーダーするなんて思いも及ばない。
でもわたし(と妻)はここのしょうゆラーメンが大好きだったので
「あの、もうやめたんですか?しょうゆラーメン」
「いや、できますから」
店主はいい人だ。
おそらくはちゃんぽんやとんこつラーメンで特色を出し、客をとりこみたいのだろうけれども、酒田の男と北海道の女はここのしょうゆラーメンをひきつづき支持します。
「仁」篇につづく。
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