事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「ザ・ディープ」 Djúpið (2012 アイスランド)

2014-11-22 | 洋画

ということで「ハード・ラッシュ」を撮り終えたコルマキュルは、アイスランドに一度もどって自国資本で映画を撮っている。それが「ザ・ディープ」。

わたしの世代だと、このタイトルを聞けばジャクリーン・ビセットが豊かな胸を海中で揺らした能天気な映画を思い出す。でもこちらは思い切りハードだ。

妙にのっそりした(伏線)船員の地味な日常がまず語られる。常に二日酔い、常に煙草をふかすことは世界共通の船乗りたち。いつもどおりに近海に漁に出るが、ウインチが故障してしまい、船員たちは極寒の海に投げ出される。

「あ、アイスランドって英語圏じゃないんだ」わたしはほんとにアイスランドのことを何にも知りません。実はこの国は日本との共通点がたくさんある。火山国であること、島国であることで他国の干渉を(デンマークなどからの支配期をのぞき)うけなかったこと、バブルに浮かれて国家経済が破綻寸前まで行ったこと、そして独自の言語と文化を守っていること。

他の船員がみな凍えて死んだのに、主人公のグッリだけは海中を漂い、陸地をめざす。海水温4度で生き続けていることすら奇跡。

彼の心のなかには、小さいころにあった火山の噴火の情景や、波間にうかぶカモメとの交流があり、そして空のオーロラを見ながら「ローンを残したまま死にたくない。ちゃんとした生活をしたい」と願い続ける。そして陸地が見え始め……ここからの展開は予想外でした。

途中でそうじゃないかなあと思ったんだけど、このお話、なんと実話でしたっ!この奇跡の生還は、アイスランドでは有名なお話らしいのである。彼は国民的ヒーローになるが……静かな幕切れがすばらしい。

北の小国と侮るなかれ、やはり才能とはどんな場所でも(活火山のように)噴き出してくるんだなあとつくづく。で、次に撮ったのが大娯楽作「2ガンズ」という振幅の大きさ。コルマキュルの今後に、期待大です。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「ハード・ラッシュ」 Contr... | トップ | 黒田官兵衛 第四十七話「如... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

洋画」カテゴリの最新記事