王様のレストラン 2皿目

前号繰越。
「振り返れば奴がいる」は、評価は高いものの三谷の遅筆が原因で主演の織田裕二がブチ切れ、「もう（三谷とは）絶対に組まない」と宣言した話は前にも書いたし、「古畑～」の余勢をかった「総理と呼ばないで」（田村正和主演）では、一時間の枠をはるかに超えたセリフをぶち込んだためにドラマとしては破綻し(しかし最終話まで見ると良さがわかるはず）、浜田雅功を起用した「竜馬におまかせ！」（わたしは大好き）や「合い言葉は勇気」（役所広司主演。三谷は演出に不満があったらしい）は低視聴率にあえぎ、「今夜、宇宙の片隅で」（主演石橋貴明）にいたっては……

　こんなことを言うと怒られそうだが、三谷のセンスは、ちょっと視聴者の先を行き過ぎているのかも。その証拠に、演劇・映画・テレビと八面六臂の活躍をする彼の、しかしもっとも才能を見せつける分野は、実は単独で行う“コメント芸”ではないかとわたしはにらんでいる。映画の上映前や、記者会見などで聞かせるあいさつや返答、あれですよ。たとえば……

（自作の上映館での初日挨拶）
「携帯電話をお持ちの方は、電源をお切り下さい。ポケベルをお持ちの方は……そろそろ携帯に買い換えた方がいいですよ」

（「笑の大学」映画化記者会見）
「尊敬する役所さんを隣に言いにくいんですけど……席を外して欲しいと思うんですが」

……いやこれは笑えるけどさあ。きっとこれをテレビでやっても大爆笑ってぐあいにはいかないんだろうな、とも思う。劇場という密閉された空間でこそ生きる彼のセンスが、時代劇という異空間で展開する「新選組！」でどう花開くかは（土方役の山本耕史と斎藤一役のオダギリジョーに注目）毎週日曜日に確認するしかないか。
　あ。肝心の「王様のレストラン」については次回に！（笑）