PART3はこちら。
「結婚しないでお父さんのそばにいるわ」 と泣くしずかちゃんに、父親は 「きみはたくさんの思い出をのこしてくれた」 と諭し、
「のび太くんを選んだ君の選択は正しかったと思うよ」
と憎いセリフで決めてくれる。
そうなのだ。あの憧れの源静香と結婚することが不自然ではないと観客に思わせるくらい、野比のび太は《いい大人》に成長してしまっているのである。
同時にジャイアン(※)やスネ夫、出木杉たちも、生活感をまとった社会人として登場し、いい味を見せる。 彼らに、もうドラえもんの道具は必要ないと感じるほどに。
※ジャイアン ちゃんと剛田剛という名があるのに、なんで妹はジャイ子なんだ、というのが飲み屋でのドラえもん話の定番。
わたしが一番好きなシーンは、ラスト近く、なぜかあのロボットのことに大人になった彼らがふれないなあぁ、と思ったあたりで、のび太が小さな声で「ドラえもぉん」と子どものときのようにつぶやき、楽しかったあのころを大過去として決別するところである。
どんな人間も“成長しなければならない”業を背負い、そこに機械であるロボットが入りこむ余地はなかったというオチに、泣けないはずがないではないですか。幸福な物語は、こうして終わってしまうのですから。
今年もまた、多くののび太たちが卒業していく。礼服をクリーニングに出しながら自問する。わたしはあの哀しいロボットのように、なにごとかを彼らに与えることができたのかと。タケコプターは、ちょっと無理なんだけれど……。
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