年末のミステリランキングをチェックしていて、どう考えてもこれはわたし向きではないかと勘が働く本がある。そういうのはたいがい当たりだ。
デイヴィッド・ベニオフの「卵をめぐる祖父の戦争」がそうだったし、ドン・ウィンズロウの「ストリート・キッズ」もそうだった。
2021年版「このミステリーがすごい!」において、この「ザリガニの鳴くところ」は第2位。トップが無敵のホロヴィッツ「その裁きは死」。あの「指差す標識の事例」や「死亡通知書」よりも上なのである。なんかあるぞこの作品には。
でも貧乏だから図書館に期待するしかない。だから英米文学の棚に行って
「ザリガニザリガニザリガニ……」
とつぶやきながら(危ない人物だ)捜しても一向に見つからない。でも先日、ついに見つけましたザリガニ。
さっそく読み始める。
舞台はアメリカ南部の湿地帯。時代は1960年代から70年代。横暴な父親のために家族が次々に出奔し、ついには一人きりで(学校教育もうけずに)生きていかなければならなくなった少女。序盤は彼女のサバイバルで読ませる。そんな彼女に、読み書きを教えてくれたやさしい青年は、しかし進学のためにその土地を離れていく。
そんなとき、殺人事件が起きる。事件当時、現場近くで“目撃”されていた少女は果たして犯人なのか……
おおお面白いぞ。彼女のある種の才能が花開いていく成長物語でもある。
この作品は動物学者であるオーエンズにとってのなんと処女小説。しかも全米大ベストセラー作品で映画化もされています。大当たりではあったけれども、こんなにメジャーな小説だったのかザリガニ(笑)。
人生というのは実はとても長い。物理的に短いものであっても、それでも人生は長い。そのことの喜びと悲しさを一気に描く。まいった。
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