あの傑作「戦場のコックたち」「ベルリンは晴れているか」の深緑野分の新作は、なんと映画の“現場”のお話。
ヒロインはふたりいる。現場と言っても、2人とも俳優といっしょに撮影現場にいるわけではない。
前半の主人公であるマチルダ・セズウィックは、特殊造型師として優秀さを見せるが、ある事情で映画界から離れていく。後半の主人公であるヴィヴィアン・メリルは、アニメーターとしてその才能を認められてはいるものの、自分を信じることができず、“本物”を求めている。
特殊メイクなどを必要とする映画は、マチルダの時代(60年代)はB級扱いであることが多く、彼女の努力は報われない。映画のラストに流れるスタッフロールにも、マチルダの名前が出たことは一度もないのだ。
そんな彼女が、ある映画を観てしまう。スタンリー・キューブリックの「2001年 宇宙の旅」。
驚愕する。猿人の、特に顔の動きについて。「猿の惑星」とはレベルが違う!
そして「スターウォーズ」「未知との遭遇」……しかし彼女が特殊造型から離れる決定的なきっかけとなったのは、まだ名も知られぬ若者たちが、CGでスタンドライトを動かしてみせたショートフィルムだった。つまり、ピクサーの登場である。
時はうつって現代。CGアニメーターであるヴィヴィアンは、かつてマチルダがモンスターをつくりあげた映画のリメイクに携わる。しかしオリジナルのファンはCGによるリメイクに反発し、そのことがヴィヴィアンを落ちこませる。そして不思議な女性があらわれ、あなたはマチルダに会うべきだと告げる……
昔のスタッフロールは本当に短かった。逆に今は千人単位のスタッフの名前が出てくる。長すぎると敬遠する向きもあるようだが、試写室で自分の名前が出ると熱狂する場面があり、そうかそういうことだったかと気づかされる。
アナログでもCGでも、いい作品をクリエイトする熱意に変わりはない。そのことが十分に伝わる小説でした。マニアでなくても、楽しめる作品だと思います。っていうかわたしは耽溺しすぎ(T_T)。
めちゃくちゃ興味ある素材と設定なのに。
最近は映画ばかりで読書から離れてて。
(でも久しぶりに永井路子を読もうと、北条政子と炎環買ってきました。鎌倉殿の影響です。)
早速昨日図書館で借りてきました。
盆休最終日の今日、じっくり読み耽りたいと思います。
黙ってましたが、伝説の職人たちが
次々に登場して狂喜。
ダグラス・トランブルとかリック・ベイカー
という名をスタッフロールで見たことがある
(意識したことがある)
人なら好きになってくれる作品だと思います。
長いけどね(笑)