わかりやすっ!
新教皇の有力候補である枢機卿が4人誘拐され、1時間ごとに始末すると予告電話が入る。トム・ハンクス演じる紋章学者ラングドンは、彼らの身体に残された焼き印から、次の被害者がどこで殺害されるかを推理する……。
こんなストレートなサスペンスが中心にあるものだから、「ダ・ヴィンチ・コード」のときのようなまだるっこしさが感じられない。おまけに殺害方法が(ある理由で)バラエティに富んでいるので、いつも時報ギリギリにすべり込むご都合主義も気にならないのだ。だいたい、ラングドンが微妙に間に合わないあたりがいい(笑)。
ダン・ブラウンの原作は、例によってミステリというより情報小説なので、ラストのどんでん返しもたいがいの人が予想がつくと思う。そのゆるさ具合もわかりやすくてちょうどいいのだ。シャマランじゃないんだから、娯楽大作として王道を歩もうという志は高い。
情報小説、と否定的な意味で使ったけれど、バチカンはスイスの傭兵が警備してるとか、サン・ピエトロ大聖堂のなかで新教皇を選ぶコンクラーベってあんなことやってんのか!とそれだけで(無責任な異教徒にとっては)楽しい。これ以上のバチカンとローマの観光案内はないし。しかもラングドンはいつも地図を広げて観客に解説してくれますもの(^o^)。
しかしよく考えてみると周到に計算もされていて、ラングドンがプールで泳いでいるオープニングは、あとで出てくるあのシーンとあのシーンへの伏線だとか(タバコを吸っているととんでもない時にしんどいんだなーと理解できます)、この犯罪の動機となるキーワードが、ちゃんとデモ隊のシーンで解説済みであるあたり、金がかかった脚本だと納得できる。
そしてなによりトム・ハンクス。実はとんでもない大嘘の設定を、ねじふせるように観客に提示できるのは彼しかいない。シリアスな演技でありながら、どこか茶目っ気まで感じさせる余裕。
「トム・ハンクスってうまいねー」
いっしょに見ていた息子にまで理解できるうまさ。やっぱり、わかりやすい映画なのである。