今回の展覧会めぐり、1発目は「フェルメールとレンブラント 17世紀オランダ黄金時代の巨匠たち展」である。京急蒲田から大門で乗り換え、六本木へ移動。森アーツセンターギャラリーへと向かう。まずは切符を購入するのだが、この入口の行列がめちゃくちゃに分かりにくい。
前売り券を持っている人も、券の引き換えのために並ばなければならないようなのだ。私はどうせここで券を買わなければいけないのだが、前売り券を持っている人たちはブーブー行っていた。また、途中から行列が窓口ごとの固定列になるのだが、その列の前のほうにマヌケ(失礼)がいて手間取ると、ずいぶん進みが遅くなり、さらにイライラは増すのであった。
約30分間並び、エレベーターで52階へ。ここでも「五百羅漢展は53階なのに、止まらないの?」とか悩む人もいて、案内が実にわかりにくい(エレベーターは52階までで、53階にはエスカレーターで昇るのだ)。初めて行く人にもわかるように、少しは工夫したらどうだろうか。私も以前は52階のロッカーが使えないということで、ちょっと腹が立ったのだが、今回は改善されたもよう。ずいぶん沢山のロッカーが用意されていた。
焦ったものの、入場してみるとそれほどの混雑ではなく、見物スタート。
サロモン・ファン・ライスダール「水飲み場」:自然に満ち溢れた作品。ライスダールは今回の見ものの一つである。
エマニュエル・デ・ウィッテ「ゴシック様式のプロテスタント教会」:ゴシック建築の特徴がよく出た作品。
コルネリス・クラースゾーン・ファン・ウィーリンゲン「港町の近くにて」:船が集まる港の活気がある。
シモン・デ・フリーヘル「海上のニシン船」:地味なセピア色の作品。ヨーロッパでもニシンは結構食べるよね。
ウィレム・カルフ「貝類と杯のある静物」:貝の殻のつやや、赤サンゴの細かい描写が素晴らしい。
アブラハム・ファン・ベイエレン「果物とエビ、ワイングラスのある静物」:エビの頭部を描く際に、エビ味噌を表現しているのか青色が入っているのが生々しい。
ウィレム・ファン・アールスト「狩りの静物」:これは鳥の毛並みが素晴らしい。
フランス・ハルス「男性の肖像(聖職者)」:温和な人柄が伝わってくる、肖像画の傑作。
イサーク・リュティックハイス「女性の肖像(エリザベート・ファン・ドッペン)」:人間臭さを排し、シャープでモダンに描いた肖像画。
ルドルフ・デ・ヨング「ヴァージナルを弾く女性」:これは隅々まで描写の細かさが行きわたっている。
ヘラルト・デル・ポルフ(2世)「好奇心」:手紙をのぞき込む女性の表現、シルクのスカートの質感が見事に描写された作品。
ヨハネス・フェルメール「水差しを持つ女」:布地のテーブルとその上にある金属の質感表現はやはりフェルメールらしい素晴らしさ。明暗が強調されているというよりは、意外なほど画面全体が明るい印象だ。
ホットフリート・スハルケン「さまざまな嗜好」:タバコらしきものを吸っている人の画なのだが、ちょっとドラッグをやっているようにも見える。当時はタバコが貴重品で、そういう扱いだったのか?
レンブラント・ファン・レイン「ベローナ」:近づくと二重あごのおばちゃんにも見えるのだが、遠目に見た時の銀の鎧は素晴らしい。
レンブラントに帰属「マルハレータ・デ・ヘールの肖像」:かなり早い筆で描かれ、本格的な肖像画の参考にされた作品らしい。首周りのレースの表現は相当素晴らしい。
ヘラルト・ダウ「窓際でランプを持つ少女(好奇心の寓意)」:ランプの光と背景の闇の対照的な表現。
サミュエル・ファン・ホーホストラーテン「貧血症の女」:なぜこんなタイトルなのという気もするが、顔色が真っ白の女性。足元には足を温めるのであろう火鉢のような器具がある。
さて、この展覧会の感想だが、まずは展覧会名を「17世紀オランダ黄金時代の巨匠たち展 フェルメールとレンブラントは1展づつ」としてほしいものである。まあ、フェルメールは1点しか来ていないことがどう考えてもわかるのだが、レンブラントも1点とは思わなかった(他に帰属作品が1点)。しかし、それ以外の「巨匠たち」の作品も、なかなか良かったことは間違いない。展覧会名の羊頭狗肉さがなければ、素直にもっと感心できたと思う。
→52階からの眺め。
六本木から上野に移動。