魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

今日の魚 2008年3月23日 Vol.33

2008年03月23日 14時58分39秒 | 今日の魚(不定期更新)

今回登場するクロホシマンジュウダイScatophagus argus   (Linnaeus)という魚は、幼少のうちは虎で、成長すると豹変する魚です。

●分布

クロホシマンジュウダイは南日本、クウェート~フィジーに至るインド・太平洋の暖かい海・河川汽水域に生息する魚です。我が国では琉球列島に多いのですが、本州や四国・九州の太平洋岸の汽水域でも見られます。

●生態について

この魚の幼魚は河川汽水域を主な住処としています。私はこの魚を2回採集したことがあります。1回は沖縄の防波堤で採集したもので、全長わずか1cmの稚魚でした。このときは雨が降っていたので、水面下の塩分が非常に低かったです。

2回目は高知県の小さな河川で採集したもので、このときは小さな木の枝に数個体がまとまってついていました。
この写真の個体もそのうちの1匹です。

雑食性でサンゴ砂に付着する藻類から小さな甲殻類まで様々な餌を食べます。
成長すると海へ下りますが、内湾などに多いです。

●名前の由来

和名は黒い星の有る饅頭鯛という意味だと思います。マンジュウダイというのはスズキ目マンジュウダイ科の魚の1種です。この魚は採集したことはないですが、同じマンジュウダイ科の魚に海水魚愛好家にとっておなじみの魚がいます。それがツバメウオの仲間たちです。

学名のScatophagusというのは人糞を食べるもの、という意味だそうです。雑食性で悪食な魚(後述)なのですが、まさか人糞まで食うとは。英名(Fishbase名)のSpotted scatとは、やっぱり成魚の体側の黒色斑点に因みます。

●分類について

本種はかつてチョウチョウウオ科と近縁である、といわれました。理由はチョウチョウウオ類が経る「トリクチス幼生」という幼生期間を経て成長するからです。しかし最近の研究ではチョウチョウウオ類よりも、ニザダイやアイゴに近い仲間であることが分かりました。

アイゴ

さて、この魚はアイゴと共通することがあります。この魚の背鰭の棘に毒があるのです。そのため、取り扱いに注意が必要です。

クロホシマンジュウダイ科の魚は、Fishbaseによると、2属、4種がいることになっています。そのうち日本産は1属1種、クロホシマンジュウダイだけです。

●飼育

クロホシマンジュウダイは観賞魚の世界では古くから知られていました。当時観賞魚店では「スキャットファーガス」という名(学名に因む)で販売されていました。

私は30cmの水槽で飼育していました。水は汽水域で、ヒーター、ろ過は投げ込み式ろ過装置でした。コレだけでも十分に飼えます。

pHは7より上、つまり弱アルカリ性にします。

そのため流木などは入れません。流木は水を酸性に換えてしまいます。

他の魚とも一緒に飼育することが出来ます。カワアナゴ類や、ハゼ類などが良いでしょう。餌は悪食で様々な餌を食べます。

●参考文献・サイト
Fishbase http://www.fishbase.org/
川那部浩哉・水野信彦・細谷和海 編・監修、2001 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚 山と渓谷社、東京

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今日の魚 2008年3月14日 Vol.32

2008年03月14日 18時44分39秒 | 今日の魚(不定期更新)

最近(というか一月以上ご無沙汰でしたが)は海水魚ばかりでしたので、淡水魚を紹介します。コイ科タナゴ亜科、ヤリタナゴです。

ヤリタナゴ Tanakia lanceolata   (Temminck and Schlegel)

●分布

本種は日本産タナゴ科魚類で最も広い分布域を有します(移入種であるタイリクバラタナゴを除く)。北海道と九州南部、離島などを除いて分布しますが、局地的に分布しない箇所があります。

●生息地

「ヤリタナゴ 生息地」で「ごおgぇ」ってしまった方ごめんなさい。当ページでは、生息地の公開はいたしておりません。

でもこの魚は様々な環境に見られます。河川中流域でも見られますがやはり小さな水路などでよく見られます。底質は小さな砂あるいは泥をこのむのですが、河川中流域では大きな石がゴロゴロしているようなところに見られました。

小さな水路では、泥底では堆積物が多いような場所に見られます。また、カナダモ類の周辺にもよく見られます。

 

●繁殖

タナゴ類の繁殖で特筆すべき点は「淡水二枚貝の中に産卵する」ということです。ただし淡水二枚貝では何でもいい、というわけでなく、シジミなどには産みません。本種ではマツカサガイやニセマツカサガイに積極的に産卵するようです。ただし、他の貝にも産卵します。産卵期は春~初夏で産地によりややずれがあります。

 

●餌

雑食性で様々な餌を食べます。川の中では付着藻類やミミズ類、昆虫などを食べていますが、飼育下ではふかしたサツマイモなどの野菜類などを与えると狂ったようにたべます。

●仲間

Fishbaseによるとアブラボテ属は世界から3種が知られています。

ミヤコタナゴTanakia tanagoは関東地方に生息するタナゴの仲間で、英名をTokyo bitterling といいます。Bitterlingというのはタナゴの仲間を指します。国の天然記念物に指定されています。

もう1種、アブラボテというのがいます。この魚は濃尾平野以西の本州、四国・九州に分布します。名前の由来は茶色っぽい体色から来ています。ただし、これはまたいつか「今日の魚」で取り上げたいので、今回は紹介しません。

このアブラボテにそっくりなものにコウライボテというのがいます。この魚はかつてアブラボテ属に入れられていましたが、現在の学名はAcheilognathus signifer で、現在ではタナゴ属に入れられています。韓国にいますが、我が国でも販売されています。

●危機

タナゴ類の雄の婚姻色は華やかで、雌は灰色の地味な体色です。かつて淡水魚採集者は雄のみを持ち帰り、雌は棄てるといったことを繰り返していたという噂も耳にします。

タナゴ類は乱獲で追い詰められていったように思われますが、実際にはそれだけではありません。河川改修が行われ、三面コンクリート張りになった河川では二枚貝が生きていけず、繁殖する機会が失われてしまいます。

もちろんブラックバスやブルーギルなどに代表される移入種も彼らの脅威となっています。

我々も彼らのために何か出来ることがあるかもしれません。バスやブルーギルの駆除は私たちにもできます。そして採集した魚を最後まで世話をし、絶対に他の場所に棄ててはなりません。

未来にタナゴ類を残すためには、我々のモラルも問われそうです。

参考文献 

川那部浩哉・水野信彦・細谷和海 編・監修、2001 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚 山と渓谷社、東京

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今日の魚 2008年1月31日 Vol.31

2008年01月31日 22時07分19秒 | 今日の魚(不定期更新)

1月も終わりますね。今年初めての「今日の魚」

クロホシイシモチ Apogon notatus (Houttuyn)を堪能あれ。

●名前の由来

漢字で書くと「黒星石持」になります。黒星というのは、頭部にある黒色紋か、あるいは尾柄部の小黒点でしょうが、イシモチとは何か。この魚は魚類としては大きな「耳石」を持っており、それにちなみます。ちなみに「イシモチ」というのはシログチと呼ばれるニベ科の魚のかつての和名です。これも大きな耳石にちなむものです。

●近縁種

本種によく似た魚に「ネンブツダイ」がいます。このネンブツダイは本種によく似ていますが頭部に黒色紋がなく、眼を通る太い帯があり、腹部が薄らと黄色くなるのが特徴です。

ネンブツダイ

この仲間はいずれも口内で卵を保護する、所謂「マウスブリーダー」です。似たような習性を取るのはほかにアロワナ、アフリカン・シクリッド、アゴアマダイ科、などです。

●生態

この種はオオスジイシモチに近いものですが、オオスジイシモチとは異なり、常に大群でいます。生息場所も多様で、岩礁、防波堤、砂底の中の沈み根、藻場、やや深いトゲトサカの森、サンゴ礁・・・。分布も広く、本州沿岸からサンゴ海にまで及びます。

餌は甲殻類、ゴカイ類、小魚など多種多様で、オキアミ、活きエビ、ヤドカリ、ゴカイ、アオイソメ、キビナゴ、カタクチイワシなど様々な餌に食いついてきます。オオスジイシモチは夜間に多いですが、本種は昼でも夜でも餌をとります。

●利用

食用としてはあまり利用されません。ネンブツダイやオオスジイシモチに比べると味は劣ります。アオリイカの餌に使われることもあるようです。

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今日の魚 2007年12月21日

2007年12月21日 20時29分23秒 | 今日の魚(不定期更新)

 

このコーナーも記念すべき30回目です。

オオスジイシモチ Apogon doederleini   Jordan and Snyder

今回は「久しぶりに」「普通の」魚を取り扱いたいな、と思います。テンジクダイ科のオオスジイシモチです。西日本の釣り人ならわかりますね。あの縞々模様の魚です。

 

●名前

標準和名は「オオスジイシモチ」ですが、関西では「じゃこ」とか呼ばれており、余り人気はありません。

キンセンイシモチの項でも紹介しましたが、属名のApogon(アポゴン)というのは、テンジクダイ属の属名です。ギリシャ語でa~というのは、「~ない」、pogonというのは「ヒゲ」という意味です。日本語訳すれば「ひげがない」という意味です。

欧州の人々は、この仲間をヒメジの類に近縁だと考え、下あごにひげを持たない本属魚種に「ひげがない」という意味の学名をつけたようです。確かに、背鰭が二基であることなど、ヒメジに一見してよく似ています。

英名の Doederlein's cardinalfish や、種小名のdoederleiniというのは、どちらもL.デーデルラインというドイツ人の学者にちなんでいます。彼は来日し、様々な生物を収集しました。本種と同属のテンジクダイ類「クロイシモチ」に学名をつけたのも彼です。

●近縁種

「今日の魚」の記念すべき第1回で紹介したコスジイシモチにそっくりですが、本種では体の縦縞の数が4本で、これが7本あるコスジイシモチと区別可能です。

黒潮洗う海にはタスジイシモチやミナミフトスジイシモチという本種にそっくりなテンジクダイ科魚類がいますが、この2種の縦縞は太いので縞模様が細い本種と区別できます。

コスジイシモチ

生態

肉食の魚で甲殻類や小魚などを捕食します。魚は昼行性と夜行性のものに分けられますが本種は昼・夜どちらでも餌を食ってきます。そして簡単につれます。本種の好む餌は甲殻類(エビ等)、小魚、動物プランクトンなどで、夜間は小魚の多い場所では良くつれます。本種はマウスブリーディング(口内保育)を行います。雄が口の中で卵が孵化するまで見守るのですが、孵化したら周りの子供たちは餌、親に食べられてしまうこともあります。

利用

あまり食用にはしないのですが、鱗をとって塩焼きにする、あるいはから揚げにすると美味しく食べられます。この魚は市場に出ることがないので、この魚を食べられるのは釣り人だけですよ!!

オオスジイシモチ 2007年10月に採集。

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今日の魚 2007年12月13日

2007年12月13日 00時05分49秒 | 今日の魚(不定期更新)

今日の魚 2007年12月13日

カミソリウオ Solenostomus cyanopterus   Bleeker

WEB魚図鑑にもこの個体(この写真)は投稿したのですが、これは左右反転にして投稿しました。基本的に魚の頭は左に置かなければならないという決まりがあるためです。

●仲間

日本産カミソリウオの仲間は3種が知られていますが、Fishbaseによると、もう1種日本に分布するとあります。これにもう1種を加えた5種類がカミソリウオ科魚種の全種です。高知県沿岸では本種とニシキフウライウオが浅瀬でよく見られます。

カミソリウオと呼ばれる魚はかつて、カミソリウオ、フウライウオ、ノコギリフウライウオの3種に分けられていました。しかしこれらは全て同一の種類であることが明らかになりました。カミソリウオはトゲウオ目に含まれますが、この仲間にはヘコアユやヨウジウオ、ヘラヤガラ(写真下)など奇妙な形状をしたものが多く含まれます。

 

●生態

浅い砂底に生息します。砂底に通常はペアで見られます。水深2m以深で多いようですが、この個体は水深1mの浅瀬で採集できました。しかも複数組の個体が見られました。雌の胸鰭は大きく、卵を保護します。タツノオトシゴとは真逆なんですね。へぇ~。

肉食性で、甲殻類や小魚、動物プランクトンを捕食します。

●飼育

この魚は温和な性格なのでしょう、なかなか餌付いてくれないでこまります。ヨウジウオやテグリなど、温和な魚と飼育するのが適していると思われます。最近は採集しても持ち帰りませんが、いつかまた飼育したい魚の一つです。

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