さて、2025年も開けてからもう1週間たつが、筆者はまだお休みらしいお休みはもらえていない。基本的に朝に帰ってきて、そのまま夕方に仕事へ行くというパターン。ヒトデが足りないのだそうである。
今回は昨年末に撮影した魚の撮影。アジ科・イトヒラアジ属のテンジクアジである。テンジクアジは日本では古くからCarangoidesとは別物とされてきたが、Fishbaseなどにおいては2020年代までCarangoidesにふくめられてきたものである。なおよく知られているように、Carangoides属は現在世界で2種のみが知られている。それ以外にかつてCarangoides属に含められてきた魚は、様々な属に移動されたり、新しい独立した属に含められたりした。
テンジクアジは基本的に南方系のアジであるが、幼魚は本州から九州の太平洋岸、年によっては日本海岸にも姿を見せる。これらの地域で釣れることもあるのだが、釣りあげられてすぐのときは体が金色をしているのである。しかし死んでしまって長い時間がたった個体や、冷凍してしまったものは金色が消えてしまうようである。ただし写真の個体についても体の一部に金色が残っている。胸鰭周辺に残っているのがそれであり、この金色を体中にまとっている姿を想像してほしい。
同じイトヒラアジ属の魚で、属の標準和名になっているものにイトヒラアジというのがいる。イトヒラアジも南方の種で、秋に本州~九州の沿岸に出現し、釣れることがあるのもテンジクアジと同様である。個体数はイトヒラアジのほうが多いように思える。テンジクアジはこれまで何千、何万と魚に触って来た(と自負している)のだが、過去2回触ったのみである。以前は鹿児島県の伊東さんのところから届いたものであった。このイトヒラアジもまさにその個体である。
テンジクアジの背鰭基部
イトヒラアジの背鰭基底
テンジクアジとイトヒラアジの見分けについては、背鰭軟条部を見るのがベストであろう。イトヒラアジでは背鰭基底に黒色点が並んでいるが、テンジクアジは背鰭基底にはそのような斑点がない。また、軟条数についてもこの2種においては違いが見られ、イトヒラアジでは17~19であるが、テンジクアジでは20~22と、イトヒキアジよりも多いので見分けることができる。なお魚類検索においては側線直走部は曲走部より長いのがテンジクアジ、短いのがイトヒラアジという見分け方も紹介されているのだが、残念ながらこの形質はあまりあてにならないようである(成魚ではともかく、なのかもしれないが、少なくともこのくらいのサイズの幼魚では使えないよう)。なおイトヒラアジ属は日本に分布する2種のほかにCarangichthys humerosusというのも知られている。
テンジクアジは食用魚でもあるのだが、残念ながら今回の個体は食用にはできなかった。今回のテンジクアジは宮崎県の荒武さんを経由し、Wadaさんよりいただいたもの。おふたりにはいつも協力していただき、魚を集めている私はいつもお世話になっている。ありがとうございます。
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