いか@ 筑豊境 寓 『看猫録』

Across a Death Valley with my own Distilled Resentment

「楕円の広場に降りることはない」

2008年05月06日 13時55分16秒 | 筑波山麓

- - つくば市(筑波研究学園都市)の中心に、世界的な建築家である磯崎新が設計した「つくばセンタービルが」あり、そこに「広場」がある。一九八三年に完成してちょうど二十年余、筆者は一度としてこの「広場」に人が憩う光景を見たことがない。時間がとまり音が消えた白昼の墓場が蜃気楼のごとくゆらめくのを誰しも無意識に幻視するだろうか。その虚ろな不気味さが、確かに人を遠ざけている。 - -

            中川八洋、『福田和也と《魔の思想》』



    降りちゃった

- - そればかりか磯崎は建物の完成と同時に、「つくばセンタービル」が崩壊して、”廃墟”となった図(水彩画、一○一cm X 一七八cm)を描き、ためらうこともなく一九八五年に発表した。その題は「未来都市つくば・・・・」であった。つまり、磯崎建築学のモチーフは、一九六二年の「孵化過程」以来、一貫して「未来は廃墟、廃墟こそ未来」である。

 その前年の一九八四年には、「自註」というエッセー で、人々が「楕円の広場に降りることはない」と、つくばセンタービルの「広場」に、誰も降りて歩かないよう設計したことを告白していた。私は、「広場」に誰も降りていかない光景を二十年余りも目撃した証人であるが、それは磯崎の「設計」の意図の通りであった。 - -

   同上より。