-2003年、おいらにとって"キャリアポルノ"のアイコンは、南場智子さんとなった。―

「血反吐を吐くぐらい体当たりでやってみたい」、
『コンサルティング業界 仕事と戦略』、東洋経済新報社、2003年
去年の11月月に谷本真由美さんという人の記事『キャリアポルノは人生の無駄だ』というweb記事が出た(リンク) [twitter]。 読んですぐ、穿ってるな!と思った。 現在は、新書化されている(キャリアポルノは人生の無駄だ)。
ただし、無駄だ!という部分には疑問符。 なぜなら、そもそも人生が無駄だという人もいるからだ。 ポルノ三昧で暇をつぶしてもいいじゃないか。 そいいう無駄を省こうとする態度こそ、つまり意味を注入し、充実させようとすることに強迫的な態度こそ、「日本が世界一貧しい」原因のひとつなのではないかと思う。
さて、おいらはポルノ三昧で暇を潰している。 ポルノとは、それを見るものが他人の性交動画をみて、あたかも自分が性交に耽っている気分させるための、材料である。主に、センズリこくのに用いられる。
江藤淳がどこかで書いている; 性行そのものが猥褻なわけではない。 他人の性行を見て、あたかも自分が性行しているように思うのが、猥褻なのである、と。(江藤の著作のどこに書いてあったのか、すぐ出ない。 ありがとう!おいらの記憶力)
ポルノ大好きなおいらは、「キャリア・ポルノ」と定義されたポルノも大好きだと気づかされた。 初めて知ったょ、そんな言葉、「キャリア・ポルノ」。 造語者の谷本真由美さん、ありがとう。
出世しそこなった出世主義者のおいらは、現実では出世の果実を享受できないので、他人の出世物語をおかずに、つまりはポルノ=あたかも自分がやっているように幻想させる材料を以って、自涜に耽っているのだ。 どうせなら、偉大な出世人の伝記の「キャリア・ポルノ」をおかずに、実際の人生では所を得られなかったちんけなおいらが、あたかも自分が成功に耽っている気分になるのだ。例えば、伊藤博文の伝記(愚記事)や高杉晋作の伝記(愚記事)などだ。外国の人では、リー クアン ユーさんだ。
そして、今年は、ものすごいキャリアポルノにぶちあたり、喜んでいる。 それは、毛沢東の伝記群だ。もう、ここ数カ月、頭がしびれてしまっている。例えば、最近邦訳が出たものとして、銭理群、『毛沢東と中国(上) ある知識人による中華人民共和国史』(愚記事)。一方、ずいぶん前に出た『毛沢東の私生活』によれば、毛沢東というのは本ヲタで、ほっとくと、寝巻姿で一日中本を読んでいたそうだ。そして、夜中に筆で宣言や命令書を書いて、発するのだ。その結果、数千万人の人生が翻弄される。
■ 今日の本題に戻る。今から10年前に知った人、南場智子さん。「血反吐を吐くぐらい体当たりでやってみたい」と言っていた。その当時すでにDeNAの立ち上げから数年経っていたのだ。今年、『不格好経営』としてのその顛末を本とした (事故のてんまつ、 企業の顛末)。どれだけ血反吐が吐かれたか興味があったおいらも読んだ。そして、世間では売上No1の書籍だそうだ。みんな好きなんだよ、「キャリア・ポルノ」。

現在、三本の矢とかで経済成長のための施策がなされている。その中の成長戦略の実施。難しいだろうな。なぜなら、いわゆる「成長戦略」の実施は今回の安倍内閣以前に小泉政権の頃からずーっと言われ、そして実現できていない。理由は、無文化による経済成長の無理である。って、今、無文化による経済成長の無理って、おいらが作った。今回のアベノミクスがうまくいかないだろうと予測する人たちは、金融緩和で貨幣の供給を過剰にしたって、経済成長は難しいであろうという予測である。おいらもそう思う。おいらはかつて書いた(愚記事);
資本家さまの最大の任務は、投資である。現在の日本企業の経営者の最大の 問題は投資家でないことだ。これは、本人たちの問題ばかりではなく、日本において成長する経済案件がないので、投資できないのである。一方、民間の投資が 少ないので、政府が財政出動し、「投資」している。政府がやることなので、ほとんどが無駄な投資である。食税研究者と彼らの研究課題への投資なぞ、最たる ものである([1] 「研究」したって日本は富まない 、[2] 無駄な公共事業としての肥大化した大学院教育)。そして、財政赤字が膨らんでいくのである。
3本の矢の内のひとつである成長戦略。これは、小渕内閣以降、全然進捗していない。理由は、ぬっぽんずんがまぬけだからである。成長戦略とは経済的事象ではなく、文化的事象(端的には、いわゆる、イノベーション)だからだ。イノベーションが実施できないのは、当事者の文明的器量が小さいからだ(関連愚記事; 想像力なき日本)。いくらカネがあってもダメなのだ。
カネで買えないもの、それは、イノベーション !
そして、イノベーションは人材が左右するのだ。話を南場智子、『不格好経営』に戻して、この本で書いてある最重要のことは、資本金1.5億円のベンチャーから始まったDeNAの誕生と成長の源泉は人材である、ということである。そして、書かれていないことは、そういう人材がどのようにできるかである。ご本人の例を除いて。
「中産階級の罠」という言葉がある。経済の発達段階において、発展途上国が経済成長を進める途上で、中産階級をその国に分厚く形成できることが困難であり、少なからずの国が中産階級を形成できずに、経済成長が停滞してしまう現象である。例えば、現在の中国は「中産階級の罠」に嵌るか、どうかが経済発展を研究する見地から注目されている。それに比べると日本は、1960年代に「中産階級の罠」にはまらず、分厚い中産階級層を形成できたと言える。
さて、「ラッフルズの罠」。「ラッフルズの罠」って、今、おいらが作った。ラッフルズとは19世紀の人(愚記事におけるラッフルズ)。英国人でシンガポールを「創った」ひとだ。つまりは、冒険的なイノベーターのことである。「ラッフルズの罠」というと奇を衒いすぎなので、「ジョブスの罠」、あるいは、「iPhoneの罠」でもいい。つまり、中産階級の社会の後の発達段階、低成長期での経済成長のためのイノベーションを実施する主体を指す。米ソ冷戦後の日本は、この「ジョブスの罠」に嵌っているのだ。つまり、低成長期での経済成長のためのイノベーションを実施する主体の層を形成できなかった。 「教育」の失敗!
こういう隠喩を背景に、 南場智子、『不格好経営』を読むと、DeNAを誕生させ、成長させた人材像が垣間見える。
それにしても、人材育成ほど難しいものはないことを本書は示す。 なぜなら、ゼロから会社を立ち上げ、売上高が数百億円となった創始者のひとりの女性の受けた教育が;
女に学問はいらない! もともと女に教育は必要ないと考える 父親によるものだ。
すごいにゃ~。
今、ぬっぽんには、秀才ちゃんはいっぱいいる。掃いて捨てるほどいる。○X {女、XX屋、サラリーマン!}に学問はいらない!といわれたことなぞもちろんなく、みんな子供の頃からおべんきょーしてきた秀才ちゃんたちだ。しかしながら、残念なことに、彼らは、「ジョブスの罠」、あるいは、「iPhoneの罠」における、カス、クズである。
無文化による経済成長の無理とは、その経済状況にふさわしい人材を供給できる文化的状況がないことを意味する。

無理、 むり、 ムリ、
もちろん、じゃー、今日から、女の子に「女に学問はいらない」といえば、いいわけでもない。
ただ、ガッコに没批判的に通う秀才ちゃんたちには、変なことを習うと将来、「苦しみながら「unlearning (学習消去)」を続ける毎日」が来るよ。もっとも、ずっと「中産階級のまどろみ」の中で惰眠をむさぼれればいいのだけれど...
◆まとめ; 10万部以上売れている南場智子、『不格好経営』は、「中産階級のまどろみ」の中で惰眠をむさぼっている人たちに読まれているらしい。
▼ PS; この本、南場智子、『不格好経営』は、なかなか味わい深い。 女三界(さんがい)に家なし[1]、という視点からも読める。 子供の頃はちゃぶ台返しの父の元で、結婚してからは癌の夫のために、..... でも、資本の世界には、ばっちり、「家」=居場所、あり!!!??? やっぱり、すごいな!、資本の文明化作用。
[1]
〔「三界」は仏語で、欲界・色界・無色界、つまり全世界のこと〕女は三従といって、幼い時は親に従い、嫁に行っては夫に従い、老いては子に従わなければならないとされるから、一生の間、広い世界のどこにも安住の場所がない。女に定まる家なし。