いか@ 筑豊境 寓 『看猫録』

Across a Death Valley with my own Distilled Resentment

永山武四郎邸

2004年12月31日 19時29分10秒 | 札幌


急用で、札幌に行った。
せっかくなので、ついでに、永山武四郎邸(明治10年代建築)の写真を撮りにいった。

永山武四郎:黒田清隆の次の北海道開拓長官。薩摩出。屯田兵制度を岩倉具視に提言。

その動機を、おいらは、知らないが、

戊辰戦争の敗残士族を集めて屯田兵制度を発足させる。

その後の西南戦争での薩摩の内ゲバを大久保派が収拾できた一因は屯田兵という手駒をもっていたからといえる。だから、永山の屯田兵創設が内戦を意識したのであれば、その戦略性はすごい。

で、上記の家は私邸だそうだ。チンピラ兄ちゃん上がりの明治の元勲がみんな大邸宅に住んでいて、後世バカにされているが、この永山のウチも資金がどこから来たのか?知りたいところである。

詐取豪遊高校生の嘯き;あるいは薄められたラスコーリニコフ

2004年12月19日 13時22分29秒 | 日本事情

冬晴れの日に。


おれおれ詐欺で老人から多額の金を騙し取り、高級車を買ったり、フランス料理食ったり豪遊していた(豪遊というにはいじましくてみみっちい気もするが)高校生が捕まった。それだけなら、ただのおれおれ詐欺・振り込め詐欺の低年齢化ぐらいとしか気を留めることもないのだが、高校生の犯人言い分が少しおもしろかった。

(どうせ使いもしない)金を溜め込んでいる老人から金を取って、豪遊することで、消費拡大・経済の活性化に一役買ったものだ。

と、のたまいあそばされたのですた。

 犯罪者の三百代言とは言え、にやりとしてしまった。まるで、ラスコーリニコフみたいだな。彼は老婆2人を殺害しちっぽけな金しか奪えなかったのと比べても、日本の高校生は人殺しをすることなく、ラスコーリニコフに比べびっくりするほどの金を奪い、蕩尽した。そしてその「動機」は同じである。

 その「動機」。ドストエフスキー作『罪と罰』の主人公ラスコーリニコフは困窮で学生生活の中断の憂き目にあい、ナポレンオンのような強者はまぬけな凡人を踏み越えて歴史的使命を果たすべきであるという「理論」を持ち、「寝台の下に赤革のトランクを入れている、痩せこけた、うすぎたない、小役人の後家の金貸し婆あ」を殺害、金を奪う。

 日本の高校生・犯罪者は事件前にその動機と理論を自覚・表明していたわけでわないことは、ラスコーリニコフとの大きな違いではある。もちろん犯罪日本人高校生も、目先の欲で犯罪を犯して、上記の理屈は後付けの言い分であろう。その言い分は言い訳にさえならない。しかし、理屈としてはおもしろい。泥棒にも3分の理屈とはよく言ったものであるし、かの大宅映子女史も、日本の老人は金を溜め込んでいてそのことが経済を停滞させているという高校生犯罪者の一部を、認めていた。

 それにしても、ラスコーリニコフにしても日本人高校生詐欺師にしても、自分達の犯罪の正当化のダシになにか言うが、日本のこの詐欺事件では需要拡大・経済活性化、その犯罪が遂行されたとしてもその建前や目標の推進への寄与は些細である。したがって、実効性がないので、彼らの言い分は論理的でさえない。考えてみれば、今度の高校生詐欺師が薄められたラスコーリニコフというより、ラスコーリニコフの理屈ややったことがちんけだったと言えるかもしれない。現代の本当のラスコーリニコフは、自由と民主のために戦争をする米国であろう。この問題はまたいつか。

 ところで、ラスコーリニコフや高校生詐欺師よりももっと多額の金を、それも公金を、騙し取った詐欺師がいる。三井物産の26才の社員。東京都などが推進しているディーゼルエンジン用の排ガス清浄化装置の普及、補助金付きに目をつけ、なんら効果のないディーゼルエンジン用の排ガス清浄化装置を製造・販売したうえ、おまけに都や県の補助金を騙し取っていたのである。石原都知事からは、やくざまがいと罵倒され、世間からは国賊と非難ゴーゴー。

 この26歳物産社員は何を考えいたんだろう?彼の一番のまぬけさは上記のラスコーリニコフや高校生詐欺師のような建前さえないのである。たとえば、どんなに公金を騙し取ったとしても、それで空気の清浄化に役立ったのであればまだしも、なんの「歴史的使命」もないのである。三井物産はなにがなんでも、お上をだましてでも金儲けせー、ということなのだろうけど。だから、社内では案外ラスコーリニコフできるのかもしれない。



三島由紀夫の自衛隊二分割論

2004年12月11日 10時22分06秒 | 日本事情



近所の図書館で『若きサムライのために』三島由紀夫、日本教文社、昭和44年初版、を借りる。
 
■三島は自衛隊を二分割せよと言ってる。つまり、国土防衛軍と国連警察予備軍にである。国土防衛軍は米国と同盟しない独立軍隊、そして国連警察予備軍は、国連という語を織り込みながらも、安保条約に忠実な警察予備軍にするとしている。前者の仮想的は間接侵略者、当時で言えば中ソの尻馬に乗ったアカ日本人だね、だそうだ。こう聞くとゴリゴリの反共主義者の紋きりのようだが、国土防衛軍の意義のもうひとつは治安出動を、米軍の指図を受けず、すること。つまり、当時自衛隊というのは在日米軍の補完組織という意識・実体が濃かったんだろうね。
 三島の意見はともかく、最近も自衛隊二分割論てのがあるけど(小沢一郎とか)、三島が嚆矢かも、とおもった次第。

■で、三島はアイデアを出す・作るのがすきだったんだろう。そして、そのアイデアを実現した。上記の、どうみても恥ずかしくてダサイ格好と肉体も、自分で観念的に設計して、設計だけじゃだめだ!ちゃんと実現させるぞと肉体改造して、そしてポーズをおとりになっているわけだ。

■本文中、高坂正尭に言及し、

非常に先入観のない学者で、ぼくは若い人の中で非常にいい学者だと思う。だけれども、彼の現実主義に徹底すると現状肯定主義の論理的なレトリックになるということが、(略)、ぼくにはひしひしと感じられる。

と言っている。これはいいことを、その当時に、言っている。おいらは、高坂(とその同調者)こそ現在の憲法による日本が米国保護国であることを隠蔽してきたのだと思う。当時高坂は護憲の有力論客であった。

高坂は、晩年、改憲しないと国が滅びるといった。吉田茂論で出世したが、晩年には重光葵を語っていた。


「働いたら負けかと」:今年の衝撃お言葉

2004年12月05日 17時29分32秒 | 日本事情
今年のインパクトのあった言葉:


うーん。つわものの発言である。
いけるところまで、ぶっちぎってほしいと祈るばかりである。おもしろいのは、「勝ち負け」で決めていること。働いて高収入で「勝ち組」になろうとしている人と、実は、勝ち負けにこだわる点で一致するメンタリティをもっていること。

でも、最後におしまいはやってくる。
「門野さん。僕はちょっと職業を探してくる」と云うや否や、鳥打帽を被って、傘も指さずに日盛りの表へ飛び出した。

(略)

代助は自分の頭が焼け尽きる迄電車に乗って行かうと決心した。
漱石、『それから』の結末。





こちらは、

  人格を否定するような動き。

おそろしいですね、怖いですね。これも2重におそろしいのである。人格を否定をする動きも恐ろしいなら、臣下を人格を否定する動きをしたと君子が言うこともこれまた恐ろしい。これこそその臣下の人格の否定である。


朝日な侍従さん

2004年12月01日 21時00分50秒 | 日本事情

表紙カバーを取ると葵がえがいてあった。


以前春嶽で言及した「A級戦犯」を祀った靖国神社の松平宮司の件の周辺を調べていたら、ひろひとさん周辺では松平宮司に批判的で、それを侍従の徳川義寛が本にしていると知る。『侍従長の遺言-昭和天皇との50年-』朝日新聞社刊、である。これは徳川自身が書いたものではなく、朝日新聞の記者・岩井克巳がインタビューしたものを本にしたものである。アマゾンの中古で買いますた。

この徳川侍従長、「A級戦犯」を合祀したことに批判的で、松平宮司はすべきでないことをしたと言っている。そして、ひろひとさんがマッカーサーに「憲法制定に力を貸してくれてありがとう」と言ったと証言、最後は、『いま憲法を改正すべきか否かと議論が出ているようですが、私個人としては、今の憲法は変える必要はないと思いますね』、と締めくくっている。「南京大虐殺」については、『南京虐殺があったとかなかったとか論争があるようですが、当時も関係者の多くは事実をしっていたんです。陛下が知っておられたかどうかはわかりませんが、折に触れて「日露戦争の時の軍とちがう」ということはおっしゃていました。』と述べ、南京問題は問答無用というとこらしい。

まあ、いずれも 朝日 なのである。

最後にP208、徳川が述べたとされる文章で、町村金五、とあるが、町村金吾、(今の外相のとうちゃん)である。だめだね、岩井クン。