石破茂という政治家は、アメリカと中国の橋渡しができる、と勘違いをしているのではないだろうか。日本は漢字文化圏に属することは否定できないが、それ以上に海洋国家であり、大陸国家とは違うという視点を忘れてはならないのである。
どちらが正しいかは、私には判断が付きかねないが、今の中国が日本にとって脅威であることは言を俟(ま)たない。梅棹忠夫が『文明の生態史観』で主張したように、「東洋対西洋」というよりも、「ロシア・中国などのユーラシア中心部と日本やヨーロッパのようなユーラシア周辺部」とを対比させた方がよいとの見方もある。
しかし、民主主義が根付いているのはユーラシア周辺部であり、日本が日米同盟を最優先に考えるというのは、それがあるからだろう。戦後の日本はアイデンティティを失ってしまった。坂本多加雄は、中国の出方を見る上で香港に注目していたが、民主化を求める人たちの声は、中国共産党によって押しつぶされたのである。日本という国家をどのように創り上げるか問われており、石破のような安易な発言は、日本を危うくしかねないのである。