石破の経済政策は、インフレを恐れるあまり、緊縮に向かいつつあるのではない。現在の物価高と言っても、値上がりしているちゅしんは生鮮食料品とエネルギー価格で、それを除いたコア指数では2・4%である。デフレから脱局を目指すべく設定した、インフレ率2%にようやく達成したのであり、これから本格的な景気回復に向かいつつあるのだ。
しかし、日本銀行は政策金利を0・5%に引き上げた。これによって景気の過熱化を防ぐという政策に転じつつある。それはアベノミクスの否定であり、そこで改善されてきた失業率を、再度悪化させるだけである。
ポール・クルーグマンは「ゼロ・インフレの追求は産出の一時的な犠牲をもたらすばかりではなく、恒久的により高い失業率をもたらすかもしれないという証拠がある」(『グローバル経済を動かす愚かな人々』三上義一訳)と書いている。
クルーグマンは政策として「まず長期的な目標として、かなり低いがゼロではない、たとえば3~4%のインフレ率を採用する。これなら市場が要求する大部分の実質賃金に対応で来る程度に高く、それでいてインフレ自体のデメリットもまだわずかだろう。しかし、金融政策の影響がインフレ率に及ぶまでには相当な時間差があるため、なんらかの中期的な目標も必要だろう。合理的な戦略は、インフレ率を望ましい水準で一定に保てるような最適水準の失業率を推定し、その近辺に安定させるよう努めることであろう」と主張している。
経済政策の根本は失業率を安定させることであり、雇用の場が確保されていることである。金融政策もそれに基づいて判断されるべきである。物価を安定させることが最優先ではないのである。
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