現在の国際情勢は複雑怪奇である。それだけに陰謀論で割り切りたくなるのもよく分かる。中共の脅威にどう対抗するかというのが欧米や日本などの目下の課題である。諜報戦も熾烈なことが行われているに違いないが、米国のCIAよりは、英国のM15(英軍情報部第5課)の動きが気になってならない▼今回の米国大統領選挙でみられるように、CIAの諜報活動はお座なりに過ぎない。大型コンピュータとか偵察衛星を駆使しても、M15のようなことはできないからである。永井陽之助は「ほとんど信じがたいことであったが、1941年までに、M15は、英本土に侵入した40名に及ぶナチ・ドイツのスパイ全員をことごとく検挙し、イギリス本土内のドイツの諜報組織のいくつかを制圧した。その組織網を介して、全組織の大半を、対独二重スパ網に変質させる離れわざに成功した」(『歴史と戦略』)と書いている▼ナチ・ドイツの裏をかくようなことをしたからこそ、諜報戦で圧倒し、連合国に勝利の女神が微笑むことになったのである。英国の最新鋭空母「クィーン・エリザベス」が東アジアに派遣されることが決まっている。そうした決定も諜報組織の情報のもとづくものであることは明らかだ。今こそ諜報機関を整備することが日本に求められている。形だけの国家安全保障会議などよりも、はるかに重要なことなのである。
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