夫の誕生日が近い。ならば旅行を!(いつもながら単純である。)と、昨年は九州を旅したが、今年は2泊する時間の余裕がなく(既にこの夏は遊び過ぎである。)「北陸3県良いとこどり 7つの味覚旅2日間」に参加することにした。母の手術が延期になった怪我の功名。相変わらず転んでもただでは起きぬ夫婦(私だけ?)である。
1泊で3県巡りということで、早朝の飛行機である。空港集合が7時とあって、予約した最寄り駅から出るリムジンバスは5時発。
4時に起床、睡眠時間は4時間半ほどである。日の出は5時16分とのこと、外はまだ真っ暗である。朝食を摂ることもなく、身支度だけして家を出る。
あまりの眠さに、なぜに空港隣接のホテルに前泊しなかったかと若干後悔したが後の祭り。
駅に向かう途中、普段駅に行く時に通るビルの自動ドアが開かないことに気づき、冷や汗をかいた。結局、遠回りして息切れしながら階段を上り、バスの出発間際に滑り込みセーフである。いやはや、こんなに早い時間から通り抜けなど出来なかったのである。お気楽に朝焼けの写真等撮っている場合ではなかった。始発駅からの客は私達夫婦とあとお一人だけ。
次の停留所でようやくあたりが明るくなり、車内も混んでくる。最後の停留所では20人ほどが乗り、ここから高速へ。車は順調に流れている。いいお天気だ。車内で持ち込んだパンや果物、ジュースの適当な朝食を済ませる。羽田着は予定通り6時半過ぎ。空港に入ると、まだ7時前とは思えない混雑ぶり。
集合場所で添乗員Tさんからチケットを受け取り、そのまま保安検査所を通過。搭乗する飛行機の離陸時間まで1時間ほどあるが、搭乗口が変更で、端から端まで歩く羽目に。
ようやくバスラウンジに到着してお茶をしながら時間調整である。
7時55分発の富山行きは定刻通りに離陸。タラップから飛行機に乗り込むと、ボーディング・ブリッジからすいすい行くのに比べ、ああ、いかにも空の旅だなと思う。朝から気温が高い。青い空は澄み切っていて、まだ真夏といった風情だ。
機長からのアナウンスでは現地は快晴、気温は既に29度という。富山きときと空港に降り立つのは初めてのこと。“きときと”という言葉を知ったのは富山県出身である室井滋さんのエッセイだったが、新鮮とか生きのいいという意味である。文字通り美味しい海鮮を頂くのが楽しみな今回の旅である。
最初の目的地は雨晴海岸。空港を出た途端に目の前に立山連峰の山々が迫ってくる。この季節にこんなにはっきりと見えるのはとてもラッキーとのこと。やっぱり晴れ女だなあとにんまりする。
こちらは藤子・F・不二雄さんの出身地ということで、路面電車はドラえもんのラッピングだ。バスの中は大人ばかりなのに、なんとなく歓声が上がって微笑ましい。
小一時間バスに揺られ、日本海の青い海が迫ってくる。夫と息子は10年余り前に2人で北陸も旅している(日本全国の路面電車制覇が目標だった)が、そのときに今回の雨晴海岸も氷見にも訪れている。
立ち寄った道の駅・雨晴(あめはらし)は3階に展望デッキのある白亜のお洒落な建物。道の駅も近年実に進化している。道路を渡れば目の前は単線でオレンジ色一両編成の氷見線が走っている。白砂青松の海岸の背景は雄大な立山連峰。さすがに夏の終わり、白い雪を被っていないので、普段目にする立山連峰のイメージとはちょっと違うが、富山湾から能登半島を望む青い空、白い雲、青い海のコラボレーションは絶景だ。
夫が試しに写真を送って息子にどこだかわかる?と訊いたら、かなり経ってから「雨晴っぽい」と戻ってきた。へええ、と驚く私である。万葉集の時代から詠まれた景勝の地、大伴家持もしばしば訪れたという。義経岩は義経が奥州へ落ち延びる途中、にわか雨が晴れるのを待ったという岩だそうで、この雨晴という地名の由来となっている。
10時のおやつにカフェで”雨晴海岸”というネーミングのサンデーをテイクアウト。ブルーハワイ味で青い空と海をイメージしたものだという。ツアーバッジを見せると白エビあられが特典でついてきた。お腹を壊すと怖いので、夫からちょっとお裾分けを頂くだけにしたでやめておく。
続いて目指すは昼食を頂く氷見の温泉宿だ。大広間で頂いたのは“富山湾の宝石”とも言われる、白エビのかき揚げ丼。サクサクのかき揚げは甘さが引き立ってとても美味だった。夫は昼から地酒を頂いて、赤い顔になってご機嫌さんである。宿は、余った時間に周りを散策するにも田んぼの真ん中。1時間の昼食タイムは時間が持たず、皆早々に集合してバスは予定より早めに宿を後にする。今回の36名様も熟年層が多いせいか、時間厳守というよりも早め、早めである。
次に目指すは隣県石川県、城下町、古都金沢である。この地には3年前のGWに息子と3人で訪れた。その時、私達夫婦は東京から北陸新幹線で、息子は京都からサンダーバードで現地集合だった。東京駅でお弁当を選んでいると、息子からいきなりお財布を落としたというとんでもない連絡が入って、新幹線の車内で銀行や郵便局のカードを止める連絡をしたり、大変な騒ぎだった。
まあ息子がいない熟年夫婦2人の旅はいたって穏やかである。今回は金沢に4時間の滞在。
とにかく天気が良く、日差しは真夏。空には入道雲である。気温は35度近いのではないか。
まずは情緒溢れる金沢三茶屋街のひとつ‘ひがし茶屋街’へ向かったが、ジリジリと照り返しが凄い。前回ランチをしたレストランが懐かしく、思わず記念撮影。通りは色とりどりの着物姿の若い女性たちで賑やかである。柳の緑も濃く、まだまだ夏満開である。金箔や和菓子、小物などのお土産屋さん、お洒落なカフェが並ぶ街を少しだけ散策して、あとは金沢の老舗和菓子屋さん経営の甘味喫茶に緊急避難してお抹茶と生菓子を頂く。夫は相変わらずあずきのアイスクリームや最中を頂いている。お腹が丈夫な人である。
続いて市民の台所、近江町市場へ。ここも前回訪れたけれど、美味しいものだらけで夫と息子にかなり散財させられた記憶がある。今回は昼食後お茶もしているし、バスの駐車場のお隣の和菓子屋さんで和菓子の試食もした後で、夫のお腹が大分大きかったこともあり、海産物やら何やらには手を出さずに済んだ。あれこれ冷やかしながら、果物屋さんでスイカを頂く。暑いときに頂くスイカは実に美味しい。
ステンドグラスが美しいパワースポット・尾山神社へ。ここでもしっかり二礼二拍手一礼のお参りを済ませる。夫は先日の住吉大社に続いて、息子のことをお祈りした模様。前回訪れた時は気づかなかったけれど、神社の脇にある蓮の花に遊ぶ金のカエルのオブジェが可愛かった。
本日最後の観光地は金沢城公園。石川門前で解散し、散策時間は1時間弱。隣の兼六園まで欲張るのはやめておく。それにしても暑い。日傘がない夫はかなりしんどそうだ。結局、冷房の効いた休憩所で暫しお休み。木陰で涼みながら軽く廻り、集合時間まで15分ほど残して石川門迄戻ってきた。その後、前回息子が金箔のソフトクリームを頂いたお土産物屋さんで、記念の品とお菓子を少し購入してバスに乗り込んだ。
まだまだ明るいのに早くも夕食である。驚いたことに、会場は前回3人で宿泊したホテルのレストランだという。こんな奇遇もあるのだとびっくり。ネタはお任せの旬の金沢寿司。ここでもみんなパパッと食事を終えて(足りなくて更に注文している強者女性もいた。)、出発時間まで時間調整。宿泊するホテルの近くでは、コンビニが2キロ先までないというドライバーさんの情報から、では、とちょっと歩いてコンビニで買い物を済ませ、ホテルのカフェで珈琲をテイクアウトしてバスに乗り込んだ。
今日の宿泊は散居村で有名な富山砺波。自宅最寄り駅前で見た朝焼けも綺麗だったけれど、点在する屋敷森を持つ家々とくっきり見える山々の稜線に広がる夕焼けもまた見事だった。明日も晴れそうだ。
朝が早かったので早めの到着は有り難い。広々とした洋室にチェックインした後は、これから温泉露天風呂で汗を流して明日に備える。本日のバス走行距離は160km。
明日はゆっくりの出発が嬉しい。