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「古書の来歴」

2011-09-11 15:51:41 | 日常のスケッチ

じつにおもしろい本だった。サラエボ・ハガダーという本を中心に据え、
現代の古書鑑定・修復家がその本の謎を読み解いていくのと並行して、
500年の歴史のなかでその本にかかわってきた多くの人間の物語が交互に描かれる。
「ダ・ヴィンチ・コード」のような知的な謎解きにわくわくさせられた。
帯に「まるで古書版CSI。古書を科学捜査する」とあるとおり、
ほんの小さなワインのしみや、挟まってい蝶の翅の断片から、
焚書の手を辛くも逃れて、この本がたどってきた道筋を推理するのだ。

その一方で、サラエボ・ハガダーの歴史はユダヤ人迫害の歴史でもある。
ユダヤ人の迫害の最たるものは、ナチスドイツによるものだが、
現代アメリカ映画の中でも、ユダヤ人を軽蔑する表現が出てきたりする。
いったいなぜユダヤ人はそこまで蔑まれるのか不思議だったが、
このサイトの説明を読んでみて、ようやく理由がわかった。

小説の最後で、現代の古書鑑定家が、未来の古書鑑定家に向けて
小さな〝種〟を仕込む。そのことで、彼女もサラエボ・ハガダーを
取り巻く人間のひとりになるという趣向がすてきだった。


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