散日拾遺

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祖霊と里山、都市の生活/土橋正幸さん逝く

2013-08-27 07:26:20 | 日記
2013年8月27日(火)

涼しい朝、当然のように寝過ごした。

勝沼さんからのコメントについて:

> 「日本人の死生観を読む」に天国の概念がなかった頃の昔の日本では、亡くなった人の魂はすぐ近くの山に行くと考えられていたと書いてありました。大きな新しい宗教は死を離れた場所へ行く特別なジャンプアップとし、小さな古い宗教(観)は死をすぐ近くに行く生と連続した移動としているように思えます。

その通りでしょうね。
「里山」というのは生態系を維持するためばかりでなく、祖霊の宿る場所としても重要であったと、誰かが書いていました。以前に紹介した私の田舎の墓地などは、まさに近場の里山の一画に位置しており、そうした死生観のひとつの象徴であったと思います。もちろん、嘗ては全国に見られた風景だったでしょう。
高度成長の中で村落共同体を物理的にも社会的にも取り崩してしまった日本人は、難しい状況に自身を追い込んでいることがこの件からもわかります。内面的には「死=身近な里山への連続移動」というイメージを引きずりながら、これを支える客観的条件を既に失っているからです。
都市の生活は、「死=遠い他界へのジャンプアップ」という死生観とセットでないと、人の不安をひどく強めるものになるのではないでしょうか。
「里山がなくても、頭上の星空があれば」と云いたいところですが、東京では星を見ることもままならないですよね。

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宮本慎也選手、引退記者会見。
これを告げる同じ面に、ヤクルトに関わるもう一人の名選手の訃報あり。

土橋正幸さん、東映で162勝を挙げた名投手である。
僕の年代ではプレーを直に見ることはできなかったが、歯切れのよい解説に往年の投球ぶりを偲んだものだ。
9連続奪三振というと、オールスターでの江夏豊の快挙が思い浮かぶが、土橋さんはシーズン中の公式戦でこれを達成している(阪急の梶本と並ぶタイ記録)。1958年(昭和33年)のことで、相手は当時最強を誇った西鉄ライオンズだったというから、なおさら驚きだ。この年の春に長嶋茂雄が巨人入団、秋の日本シリーズでは、有名な三連敗後の四連勝で西鉄が三連覇を遂げている。

77歳での他界は筋萎縮性側索硬化症(ALS)によるものと知って、頭をさらに深く垂れた。全身の筋肉が神経原性に衰えていく難病である。御本人も夫人もどれほどかつらかったことだろう。
野球の世界では嘗てゲーリック(1903-1941)がこの病気で亡くなっており、ALSというより「ルー・ゲーリック病」と呼んだ方がアメリカ人には通りが良い。(ただし、診断には異論もあるという。)彼の名を冠したALS関連の支援基金もあるらしい。

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夜中の大雨一転、晴れましたね 。いかがおすごしでしょうか?

 ユウガオのほのかに白く花ひらく空気の音をきくようなとき(鳥海昭子)

ユウガオは魅惑の人という意味があるそうです。
今日は埼玉の職場で働いた後、夜に浦和で講演の仕事です。

旬のS君、凄いなぁ、ちょっと過労が心配だけど。


(http://www.okadanouen.com/zukan/yuugao.html)