散日拾遺

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信使可覆 器欲難量 ~ 千字文 024/雪の重み

2014-02-20 09:23:23 | 日記
2014年2月20日(木)

◯ 信使可覆 器欲難量

 信(マコト)は覆(カヘソウ)ず可(ベ)からしむ
 器は量り難からんことを欲せよ

 まるで判じ物だが、意味は難しくない。ただ、「覆」の字が「復」と同じく、「くり返す(=復唱する)」の意をもつと知る必要がある。

 約束したことは、くりかえし言えるようにする(=約束を守る)こと
 自分の器量は他人から量り難いようにする(=能ある鷹らしく爪を隠す)こと
 となるのか。

 「信」について李注の引用する物語 ~ 張元伯と范巨卿の友情物語 ~ は、『雨月物語』の「菊花の契り」によく似ている。ただし二部構成である。
 九月九日重陽の節句に、元伯がかねての約束を守って巨卿を訊ねてくる話と、巨卿が死に際して元伯の夢枕に立ってこれを知らせ、元伯が直ちに訪れて巨卿を葬る話である。二つを一つの話にまとめ、「死を知らせる」モチーフを「約束を守るために死ぬ」形へ逆転させたものが「菊花の契り」で、これがまさに上田秋成の施した脚色ではないかと思う。

 後段について、器量をことさら隠すのは、宣伝して回るのと同じぐらい作為的で嫌らしいと思っていたが、一昨日ある知人から聞いた話は切実である。
 この人は小児の療育施設の長をしており、その資金調達に苦慮する立場である。役所の担当者の注目と評価を獲得することは必須だが、うっかりやり過ぎて反感を買うと覿面にホサれるというのである。才能は売るほど豊かな人なので、そういうことも起きるのだろうが、イヤな話だ。
 ここでのテーマはまたしても嫉妬(ねたみ)、何週間か毎に、このテーマに戻ってきている。昨日の千字文、子張第三の患(うれ)いも、罪悪感の投影ばかりでなく、この角度から見ることもできたのだな。

***

 火曜はこの知人を訊ねて湘南方面に出かけ、水曜は放送大学で諸会議などあった。どちらの道筋でも、街路樹のかなり大きな枝が灌木の上に落ちているのを見た。鋸で伐ったのとは違い、根本から千切られたような具合で、明らかに雪の仕業である。桜もクスノキも、雪には抗すべくもない。送電線のケーブルが雪の重みで切れる話は、昔からよくあった。
 最寄り駅への道ばたには、高さ1mほどの立派な「かまくら」ができていて、子ども達が中でままごとをした形跡がある。

 三度目の雪がどうやら回避されそうで、安堵もあり落胆もありというところ。