2014年9月26日(金)
【足入れ婚】
1 婚姻成立祝いをしただけで嫁は実家に帰って、婿が泊まりに通う妻問(つまど)い婚の形を一定期間とったのち、嫁が婿方の家へ移るもの。あしいれ。
2 内祝言の後、嫁が婿方に移り住む風習。あしいれ。
(デジタル大辞泉)
これじゃ、かえって分からない。一般的にはそういう説明になるんだろうが、むしろ個別の(特殊の?)例を挙げた方がわかりやすい。
1は平安文学などで馴染みの形式だが、ここで気にしているのは2の系列である。「内祝言の後、嫁が婿方に移り住」んだ後が重要で、たとえば、めでたく挙児に成功した暁に、初めて正式の妻として認められる(本祝言?)というものである。これは「三年子なきは去る」と同系列の発想で、つい最近まで確かに例があった。
実は、北海道に住んだことのある人に聞かされたのだけれど、アイヌ系の女性が倭人の男性に嫁いだ場合、生まれた子どもがアイヌの身体的特徴を強く現していると、母親ごと実家に帰される例があったというのである。未確認の伝聞情報であり、内容もあまりに露骨で痛ましいことなので、いくら何でもと疑う気持ちがあった。しかし、この極端な話の手前に「足入れ婚」の風習を置いてみれば、実はそこにわずかな隔たりしかないのに気づく。
「子どもを産めなければ、正妻と認めない」
のが上記のタイプの足入れ婚だとすれば、
「然るべき条件を備えた子どもを産めなければ、正妻と認めない」
のが上記の伝聞情報の意味するところだからだ。
いつの、どこの世界の話をしているかと言われそうだが、そうでもない。
タイ人の代理母の出産した双生児のうち、「健常児」だけを引き取ってダウン症児の引き取りを拒絶したオーストラリアの依頼人、まるで製造物瑕疵の論法だけれど、これも「一定の条件を満たした子どもでなければ存在を認めない」という点で上記と共通している。
このニュースに憤った人は少なくないと思われるが、それと「出生前診断によって受精卵を選別する」発想とが、これまたわずかに一歩を隔てるに過ぎない。
「授かるものを受けとる」という原則から一歩踏み出したが最後、遠い奈落に至るまで、僕らの我欲には歯止めのかけようがないのだ。
【足入れ婚】
1 婚姻成立祝いをしただけで嫁は実家に帰って、婿が泊まりに通う妻問(つまど)い婚の形を一定期間とったのち、嫁が婿方の家へ移るもの。あしいれ。
2 内祝言の後、嫁が婿方に移り住む風習。あしいれ。
(デジタル大辞泉)
これじゃ、かえって分からない。一般的にはそういう説明になるんだろうが、むしろ個別の(特殊の?)例を挙げた方がわかりやすい。
1は平安文学などで馴染みの形式だが、ここで気にしているのは2の系列である。「内祝言の後、嫁が婿方に移り住」んだ後が重要で、たとえば、めでたく挙児に成功した暁に、初めて正式の妻として認められる(本祝言?)というものである。これは「三年子なきは去る」と同系列の発想で、つい最近まで確かに例があった。
実は、北海道に住んだことのある人に聞かされたのだけれど、アイヌ系の女性が倭人の男性に嫁いだ場合、生まれた子どもがアイヌの身体的特徴を強く現していると、母親ごと実家に帰される例があったというのである。未確認の伝聞情報であり、内容もあまりに露骨で痛ましいことなので、いくら何でもと疑う気持ちがあった。しかし、この極端な話の手前に「足入れ婚」の風習を置いてみれば、実はそこにわずかな隔たりしかないのに気づく。
「子どもを産めなければ、正妻と認めない」
のが上記のタイプの足入れ婚だとすれば、
「然るべき条件を備えた子どもを産めなければ、正妻と認めない」
のが上記の伝聞情報の意味するところだからだ。
いつの、どこの世界の話をしているかと言われそうだが、そうでもない。
タイ人の代理母の出産した双生児のうち、「健常児」だけを引き取ってダウン症児の引き取りを拒絶したオーストラリアの依頼人、まるで製造物瑕疵の論法だけれど、これも「一定の条件を満たした子どもでなければ存在を認めない」という点で上記と共通している。
このニュースに憤った人は少なくないと思われるが、それと「出生前診断によって受精卵を選別する」発想とが、これまたわずかに一歩を隔てるに過ぎない。
「授かるものを受けとる」という原則から一歩踏み出したが最後、遠い奈落に至るまで、僕らの我欲には歯止めのかけようがないのだ。