風鈴と洗い晒しの軍手哉 炎火
大袈裟に書けば打ち水沸湯す
折り返すバス耿耿と蛍の夜 薪
路を掃く音枕辺に夏の朝
蛍来いポリープ二つ飛んで行け 洋子
三本のマッチ使いて蚊遣り焚く
残光の謎めく軌跡蛍の灯 豊春
青虫の隠遁術や七変化
ぬくき手や足元悪しき蛍狩り 歩智
蝶か蛾か毛虫にそっと問うてみる
自分史のところどころに百合が咲き 章子
文通のいつしか途絶ゆ恋蛍
万緑や山いっぱいを深呼吸 鼓夢
錨星早苗の水を渡りゆく
夏衣透けし白色整えて 一煌
歳かさね化粧の心半夏生
五十年余嫁し住む町や著莪の花 稱子
夏の雷たちまち烟る妙義山
火を曳いて絡むばかりの蛍かな 雲水
明易やあの世の父におこられて