名残雪ひとりにも在る夕支度 章子
瓶詰の蓋がとれぬよ春の闇
春浅し寄せ来る波も貝がらも 一煌
海の上大きすぎたる春の月
黄砂降るインドの男の金ピアス 薪
搾油機の黄金の滴り四温の日
観梅やもれ聞こえくる中国語 洋子
春嵐閉じ込められてジャム作り
触れ回る話に尾鰭亀の鳴く 稱子
切りの無き女の会話春炬燵
春動く雲変幻の岬かな 豊春
黒土を益々黒く春の雪
冬の朝新聞受けにイスラム国 炎火
恐竜の博物館にぼたん雪
吾が庭に桜前線こころもち 歩智
爆買いの黄砂のごとし襲う民
メジロたち生き延びていて花蜜吸う 余白
店頭に色とりどりのチューリップ
満作を出て梅の香に入りにけり 雲水
蕗味噌の薹の悲しみ含みけり