川面に映った紅葉(こうよう)した紅葉(もみじ)。作者の耳には、何かぶつぶつと呟きが聞こえるという。呟いている者(物)は、文法的には紅葉川の川音かもしれない。しかし、そうとは限らないのだ。紅葉(もみじ)かもしれないし、森のざわめきかもしれない。近くにいる知り合い(人間)かもしれないし、他人かもしれない。森の精霊や神様かもしれない。勿論、作者の意識下の声かもしれないのだ。
主人公が何か(誰か)解らないし、「ぶつぶつ」の中身も分らない。兎に角どうにでも考えられるし、この句は、実に曖昧なのだ。
そこで私は考える。作者は、紅葉(もみじ)や川や森、作者の過去や現在や未来、そして己の無意識界に耳を傾け声を聴こうとしているのではないのか。そんな鎮静した作者の心理状態を想像するのは、考え過ぎだろうか。
ユズ(柚子)