(いたわりの ふたりのくらし ほうせんか)
例えば、「鳳仙花」というタイトルの歌は、加藤登紀子、さだまさし、島倉千代子、中島みゆきなどがそれぞれ違う作詞作曲で歌っている。又、小説では中上健次、漫画では大島由美子に同名のタイトルがあり、「鳳仙花」は、なかなかの人気者の花なのである。
鳳仙花の花は、昔から女の子が爪を赤く染めるのに使ったため、ツマクレナイ、ツマベニ(爪紅)などとも呼ばれた。又、種は蒴果(さくか)」と呼ばれ、触れると弾けるので、「私に触れないで」という花言葉がある。
従って私は、この句を読んで『「労りの二人の暮し」に何故「鳳仙花」を選んだのだろうか』という疑問が浮かんだのだ。鳳仙花の花期は夏であり、種が飛ぶのは秋だから、11月末の初冬の句会に出すには遅すぎる。
私の結論。作者は、季語「鳳仙花」を下五に斡旋することによって、上五・中七と全く逆の意味を持ってきて、読者をからかっているのだ。
センリョウ(千両)