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人生そのものがフィールドワーク。

9月22日(月)

2014年09月28日 00時15分03秒 | 2014年

  6時起床。朝食は7時半からなので、朝の散歩に出る。少し肌寒いが、空気が澄みきっていて気持ち良い。馬たちは、もう元気に放牧地に出てきている。早起きだこと。

  昨日の芦毛ちゃんはいるかなと思ったら、朝から元気に走り回っていた。食欲も旺盛である。かわいさも全開である。

  ペンションへ戻ると、目の前の牧場で1歳の幼駒とそのお母さんが仲良く散歩していた。そのうち他の幼駒も寄ってきて、草を食んだり、かけっこをして遊んだりしている。思わず笑みがこぼれてしまう光景である。

  朝食は、自家製の野菜やイクラ漬け、鱒など、これまた美味しいものばかり。昨日の夜にあれだけ食べたにも関わらず、驚くほど食が進む。

  他の宿泊者の皆さんと一緒にオーナーさんの車に乗り、JRAの調教施設見学に連れて行って頂く。この宿の大きな魅力のひとつが、この見学ツアーだ。オーナーさんの人脈によって、普通は入れない施設を見ることが出来るのである。

  その施設までの道のりも、景色が抜群で癒される。こんな景色が毎日見られるなんて、ここで生活している人が本当に羨ましい。

  見学するのは、JRA日高育成牧場(軽種馬育成調教センター)。まずは、調教用の屋内ウッドチップコースへ。ちょうど走っている馬がいて、調教の様子を見ることが出来た。ここでは、調教タイムを全てコンピューターで管理しており、馬の調子や調教の強弱が一目でわかるようになっている。

  屋内コースの隣には、超広い調教コースが広がっている。中には、直線2,000メートルのコースなんかもあるらしい。新潟競馬場に直線1,000メートルのコースがあって名物となっているが、その倍の直線コースがあるのだから、ここがどれだけ広いかよくわかる。

  車で高台に上り、施設全体を見渡す。これだけ高いところへ上っても、施設の一番遠くは見えない。また、よく見るとわかるが、ここにはラチ(柵)のないコースがたくさんあって、「コースというのはラチで囲まれているもの」という常識をぶち壊される。確かに、よく考えてみれば、広さが十分にあれば、ラチでコースを区切る必要はないのだ。


右側の色が濃い道は馬用で、坂でも滑らないようになっている。


オーナーのMさんと一緒に。

  続いては、1周1,600メートルのダートコースへ。調教チェック用の塔に上ると、1周全体がよく見渡せる。確か、川崎競馬場は1周1,200メートルだったっけ。そう考えると、簡単には言ってみたものの、1周1,600メートルの調教用コースって、贅沢なものである。

  最後に連れて行ってもらったのは、ウッドチップの坂路コース。これまで、競馬新聞の調教情報等で「ウッドチップの坂路で○○秒」というようなものは読んでいたが、いまいちそれがどういうものなのかイメージが出来ていなかった。しかし、今回実物を見たことで、スーっと理解することが出来た。この坂路、私が思っていた「坂」よりもはるかに急じゃないか。それを見ていて、野球部の頃の練習で階段上りをさせられたことを思い出した。

  大満足で見学を終え、ペンションへ戻る。目の前の放牧地では馬たちが元気に歩き回っていて、私たちが柵のほうへ近づいていくと寄ってきて、挨拶してくれる。中には、お腹の膨らんだ繁殖牝馬もいる。あのお腹からまた新しい命が産まれると思うと、何だかとても愛らしい気持ちになる。どうか、無事に産まれますように。

  オーナーさんや他の宿泊者の皆さんと別れ、ペンションを後にする。旅行で宿泊先を発つのに、こんなに名残惜しかったのは初めてである。本当にお世話になりました。また、必ず来ます。

  車を走らせ、新冠へ。途中、休憩した場所からの農園風景があまりにものどかで、ついつい長居。こういう場所で暮らすのって、現実的には苦しい面もあるのだろうが、やはり憧れる。

  ペンションで一緒に宿泊していた方から教えて頂いた牧場「ビッグレッドファーム」へ。ここでは、事前の予約や連絡なしに、有名な種牡馬たちに会うことが出来る。事務所で受付さえすれば、牧場内を自由に散策できる上に、厩舎にも出入り自由なのだ。

  今日は、合計で10頭の種牡馬に会うことが出来た。中でも有名なのは、やはりコスモバルクとアグネスデジタルだろう。アグネスデジタルはご機嫌斜めで、私が近づくとお尻を向けて後ろ足で足踏みをして「あっちいけよー」と怒っていた。一方、コスモバルクはとても大人しくて、体を撫でてあげると目を細めて喜んで(?)いた。また、ロサードという馬もいるのだが、彼は随分とツンデレの構って欲しがりで、一見ご機嫌斜めなのかと思いきや、立ち去ろうとすると何かと気を引こうとして、撫でてくれと要求してきた。そんな素直じゃないところもかわいい。


ハイアーゲーム君(主な勝ち鞍:青葉賞、鳴尾記念など)


アドマイヤマックス君(高松宮記念、富士ステークスなど)


アグネスデジタル君(安田記念、天皇賞(秋)、マイルCS、フェブラリーステークス、香港カップなど)


ご機嫌斜めなデジタル君。邪魔してごめんよ。


ロサード君(産経賞オールカマー、小倉記念、京阪杯ほか)


ツンデレなロサード君。


コスモバルク君(弥生賞、セントライト記念、シンガポール海外GⅠほか)


なんともいえない優しい表情のバルク君。

  もっともっとたくさんの牧場を巡り、たくさんの馬たちと戯れたい気持ちを何とか抑え、帰途に就く。日高を過ぎたあたりで周りの景色から牧場がなくなると、一気に寂しさがこみあげてくる。ここには、また必ず戻って来るだろう。

  レンタカーを返却し、新千歳空港にある「松尾ジンギスカン」で夕食。よく考えたら、馬に夢中で昼食をとるのを忘れていたので、めちゃくちゃお腹が空いているのだ。そのため、通常のセットでは物足りず、お肉のお代わりをしてお腹いっぱい食べた。やっぱり、ジンギスカンは美味しい。


デザートには、花畑牧場のキャラメルミックスソフトクリーム。

  お土産を買い、新千歳21時00分発のJAL528便で羽田へ戻る。帰りの飛行機も満席。その後、羽田から実家へ帰宅。

  今回の旅行は、競走馬の生まれ故郷を見たい、という単純な動機で計画・実行した。そして、その目的は十二分に達成することが出来た。そこで感じたのは、競馬場で見てきた彼らと、この牧場で見た彼らは、本当に同じ競走馬なのだろうか、ということである。競馬場で見る彼らは、眼光鋭く、全身から汗をかいて、ピリピリした雰囲気を醸し出している。一方で、牧場での彼らは本当にリラックスしていて、無邪気で、ワガママで、ストレスとは無縁に思える。どちらが彼らの本来の姿であるかは、考える余地もないだろう。しかし、だからといって、私は競馬産業を否定するつもりはない。確かに少し複雑な気持ちもあるが、私がどうあがこうが競馬は存在するし、競馬が存在しなければあの牧場も、そして馬たちもまた、存在しなくなるのである。だから私に出来るのは、彼らをただ見守り、応援し、そして無事にレースを終えて穏やかな余生を営めるよう祈ることだけである。特に、最後の部分に関しては、引退した多くの競走馬にとって、その余生は穏やかではないと聞く。昨日と今日会うことが出来た功労馬たちのように余生を過ごすのは、ほんの一部なのである。そんな現状に対し、何が出来るのか。NPOを始めとして、数多くの団体が引退後の競走馬の生活を支える活動をしている。その活動に少しでも寄与することが出来ればと思う。今回の旅行を通して、競走馬たちの現役前、現役後の様子を目の当たりにし、そんなことを考えさせられた。


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