6時起床。期待しながらカーテンを開けたが、新たに雪が降った形跡は見られない。
朝風呂へ。やはり露天風呂が素晴らしい。昨晩以上に冷えた空気と熱めの温泉。肩まで浸かって身体を温め、上がって外気で一気に冷やすというのを繰り返す。爽快さもあり、身体がふわーっと軽くなっていく感覚。これがサウナ界隈で言うところの「整う」というやつか。
7時半から朝食。やはり会場が寒いし落ち着かない。
9時過ぎにチェックアウト。今日も良い天気である。
少しだけ関越道に乗り、水上へ移動する。期待通り、こちらのほうが積雪量が多い。
しかも、ふかふかの雪である。
「天一美術館」へ。途中で道に迷ったが、近くの旅館(旅館たにがわ)の方がとても親切に案内してくださった。本当にありがとうございました。
天一美術館は、「銀座天一」の創業者である故・矢吹勇雄の個人コレクションを展示する美術館である。私たちのお目当ては娘が大好きなNHKの『ねこのめ美じゅつかん』で紹介されていた岸田劉生の「麗子像」だが、他にもピカソやルオー、ロダン、ルノワールなど、私でも知っている著名な画家・作家の作品が数多く展示されている。これらが全て個人所有であるというのは驚きである。建物も吉村順三の遺作だそうで、外観はもちろん建物内の構造やデザインが本当に素敵だった。
生で観る「麗子像」には愛らしさだけでなく生々しさや迫力もあり、わずかだが岸田劉生の「デロリ」という言葉の意味がわかったような気がする。『ねこのめ美じゅつかん』で紹介されていた「正面麗子」も素晴らしかったが、個人的には「肩掛け麗子」の何ともいえない自然な表情が強く印象に残った。岸田劉生は38歳で亡くなっており、その時麗子はまだ15歳だったそうだが、もっと長生きしていたら大人の麗子像もたくさん描いていただろう。それも観てみたかった。
観覧後にはカモミールティーを振る舞って頂いた。粋なサービスである。娘の分は冷ましておいてくださるなど、お気遣いを頂き、ありがとうございました。
外へ出ると綺麗な晴れ間が広がっていた。
娘に妻とのツーショットを撮ってもらう。
娘の雪遊びモードスイッチが入ったようである。
駐車場と美術館を結ぶ階段はそこそこ急で一部凍っている場所もあるので、冬季は足元にご注意ください。
どうやら雪合戦をするつもりらしい。
雪はサラサラで高級なかき氷のようである。しかし、食べずに丸めて投げる。
こちらが本気で投げられないのをいいことに、狙い撃ちされる。何はともあれ、少しの時間ではあるが娘に雪遊びをさせてあげられて良かった。
渋川市街まで戻り、群馬に本店のある北関東のご当地スーパー「とりせん」へ。1ヵ月ほど前、確かテレ東の『ソレダメ!』だったと思うが、群馬のご当地情報を紹介する番組が放送されており、そこで「とりせん」を知った娘が何度も行ってみたいと言うので行程に組み込んだ。というよりも、今回の年末旅行の行き先を群馬にしたきっかけがこの「とりせん」で、ここに行ける場所で泊まるとしたら、という順番で宿泊地を決めたというのが実際のところである。
昼食用に、番組でイチ押しとして紹介されていたお弁当やお惣菜を買い回る。
佐野名物イモフライ串。佐野って栃木じゃんというツッコミは控える。
娘の大好きな唐揚げは外せない。
買い物を終え、レンタカーを返却して渋川駅へ。当初は電車に乗ってからの予定だったが、時間に余裕もあるし何より娘が空腹で不機嫌モードに入りつつあるので、ロータリーのベンチでつまみ食いを始める。
「めちゃ旨唐揚げ」と名付けられているだけあって、本当に美味しい。冷めていても美味しいのはすごい。
超ジャンボチキンカツ(ハーフサイズ)も開けたが、一口食べてこれはソースを付けて食べたほうが美味しいということがわかったので、義実家まで持ち帰ることにする。
コロッケはそのまま食べても美味しい。
イモフライ串は中のお芋がしっとりしていて、ポテトサラダのじゃがいものような食感。パサパサした感じを想像していたので驚かされた。恐れ入りました。
乗車10分前に改札を入る。ちょうど下りホームに上越線の水上行きが入線してきた。211系である。乗りたい気持ちをぐっと堪える。
渋川13:49発の特急草津・四万2号に乗る。車内は渋川でほぼ満席になった。草津・四万・伊香保温泉から帰る人が一同に会している。
車内で昼食(の本番)。それぞれお弁当を開ける。娘はお弁当も唐揚げメインのものを選んでおり、さすがに食べられないだろうと思いきやほとんど平らげた。
妻と私は上州名物と謳われているソースカツ丼と鶏めしをシェアして食べる。
鶏めしの鶏肉がとてもしっとりしていて新鮮な味だった。ソースが濃いめのところも良い。
大宮駅で下車。渋川から大宮までは1時間強で、お弁当を食べていたらあっという間だった。
川越線に乗り換える。川越線の運転間隔の長さは何度乗っても慣れない。
川越駅前まで義父に迎えに来て頂き、義実家へおじゃまする。
荷解きをして、義母が淹れてくださった珈琲を飲みながらゆっくりお喋り。
夕食前にお風呂を頂く。広くて暖かくて快適そのものである。危うくそのまま寝そうになった。
夕食はすき焼き、蛸刺し、ポテトサラダ、株の粕漬けなどをご馳走になる。
タコのお刺身が新鮮でとても美味しかった。
すき焼きのお肉は2種類。私たちが注文して事前にお送りしておいた足柄牛と、私の実家からお歳暮で届いたという○○牛(種類を忘れた)。足柄牛はあまり市場に出回らないもの(箱根の旅館などへ卸されている)なので私も楽しみにしていたし美味しかったのだが、それ以上に母が選んだのであろうお歳暮のお肉が素晴らしかった。
結婚してからは大晦日に義実家ですき焼きを食べさせて頂くことが恒例となっており、それはこれからもずっと続いて欲しいが、私は毎回食べるだけなので申し訳ない。いつも本当にありがとうございます。
食後のデザートは「とりせん」で買ってきた焼きまんじゅう。
妻がトースターで焼いてくれたら、焼きたてのようにふわふわになって美味しかった。
昨日今日の日記の原稿を書きながら『紅白歌合戦』を観る。昨今は知らない歌手のほうが圧倒的に多くなっているが、HYの「366」やGLAYの「誘惑」、世代ではないが南こうせつの「神田川」やイルカの「なごり雪」など、思わず手を止めて聴き入ってしまう曲がたくさんあった。
「神田川」を一緒に聴いていた娘から、「なんで優しさがこわいの?」と質問される。彼女はきっと人生で初めて失うものが出来た。親兄弟や友達とは違い、恋人とはいずれはっきりとした別れがやってくる。それまで怖いものは何もなかったけれど、大切なものを失うことを考えると怖かった。というのが私の解釈なのだが、あまり自信はない。
一方で、私がこの曲を初めて聴いた時(おそらく中学生の頃だったと思う)に思ったのは、お風呂上がりの女性を震えるほど冷えるまで外で待たせる男が優しいわけないから、優しいのは女性で、その「優しさが怖かった」のは男のほうなのではないかと考えた。ただ、そうなると曲中で「貴方」と「私」が入れ替わることになるので、それはそれで変だよなと思ったことをよく覚えている。
いずれにしても、娘に説明するのは少々難しい。とりあえずその場は「人によって理由は違うかも。娘ちゃんがもう少し大人になったら自分で答えがわかるかもしれないね」と逃げてしまった。
「今日は遅くまで起きてる!」と意気込んでいた娘が寝落ちしたタイミングで、一緒に寝室へ上がる。
23時過ぎに就寝。米津玄師と「虎に翼」のスペシャルドラマを見逃してしまったのが心残りである。