私だっていい年なんだからね、何時までもお前達のお父さんや、お父さんの弟に当る叔父さんの、面倒を見られる訳じゃ無いんだよ。孫のお前達になれば尚更だ。お前さん達が大人になる迄には、きっと私はこの世にはいないだろうさ。だから、お前さん達も自分でしっかりやって行かなくちゃいけないよ。
いいね、お祖父ちゃんの言う事が分かったね。叔父さんには冷たくするくらいの方が丁度いいんだよ、世間知らずだからね。お祖母ちゃんが末っ子だからと甘やかすからいけなかったんだよ。これからは冷たくしなさい、その方が叔父さんの為にもなる、と思う事だよ。そして叔父さんと遊んだり、叔父さんに愛想よくしたりしないで、この家に叔父さんが来るのだってなるべく断るようにするんだよ。
姉さん(孫たちの母)も、あれが来ても特に美味しい食べ物やいい茶なんぞ出さんでいいからね。接待だってお金が掛かるんだ。これからは身内に余計なお金を使わなくていいよ。私達にもこれを最後にするとよい。
そう祖父はこの家の孫や、その母である嫁に言って聞かせたのでした。
「『何時までも、有ると思うな親と金』だよ。」
最後にそう祖父は言うと、叔父さんの為に成る事なんだから、そしてこの事はくれぐれも叔父さんには内緒だからね、とこの家の嫁や孫に念を押すと、その後に彼等の叔父の家に回ったのでした。
そうか、長男の甥の話を聞いて彼は嘆息しました。父はこの長兄の孫に会う為に、遠回りして態々下校路で待ち伏せしていたんだな、と彼は察しました。
「そうなんだ、おっちゃん。」
彼は話を続けました。お祖父ちゃんは僕に後を継いで欲しいというんだ。もし駄目なら弟でもいいと言っていたよ。家は男兄弟が2人いるから自分の跡取りには安心だって。もし叔父さんが自分の跡を継ぐような器量のある商人に成れなかったら、だけど…。と、彼は叔父の顔色の変化を案じながら、祖父から聞いた話を正直に叔父に打ち明けたのでした。