「いやあ、お前達のおかげで久しぶりに懐かしい話題の時間が持てたよ。」
そう叔父がしみじみとした調子で言うと、叔父さん「ひと時」でも分かるわ、と姪は笑顔で答えるのでした。叔父さんの言葉は案外と遠慮が多いと思うの、私。彼女はそう言うと、最近の子は皆大抵は大人の話が結構分かるんだからと話し出しました。
「子供同士の話では、皆そう言っている事よ。」
そう姪は言うと、だからと、叔父さんには普通に喋ってもらいたいの。その方が私達にも言葉の勉強になっていいのよ。赤ちゃん言葉や子供向けの言葉は、まるで馬鹿にされているようで返って白けてしまうの。姪は近頃の子供は皆そうだと主張すると、叔父に自分達に向けての話し方を大人と同じ様に改めて欲しいと訴えるのでした。
「分からない言葉はその都度聞くから、教えてもらえれば覚えるわ。」
彼女の言葉に、兄も同意して叔父に頷いて見せました。
「俺もこいつには教えてるしね。」
あっちの叔父さん達にも、もうこの事は言ったな。そう兄が妹に声を掛けると、彼女はええと頷きました。
「もう?、あっちの叔父さん達はそうなのかい?」
叔父は義姉さんの兄弟にちょっと引け目を感じたようでした。彼は静かに姪に尋ねました。それに答えて、彼女はあちらはもうかなり前からそうだと答えます。
「こっちから言わなくても、子供が大人の言葉を覚えるのは当たり前だ、って言って、早くから教えてもらえたのだ。」
と話します。
そうか、彼は家同士の隔たりというものを寂しく感じました。自分は自分が教えられた通りに子に教えるものだと思っていたのだが、違うのだ、そうなのだなぁと、その家によって家風や子育ては違うものなのだなぁと、彼は改めて結婚や家というものについて考え込むのでした。
そして、「兄さんが義姉さんをねぇ。よく言って聞かせるか、はっ。」と、あの兄さんがねぇと、自分が幼い頃から見知っている平々凡々とした兄の姿からは想像さえ出来ない、姿が同じでもまるで別の人間がそこに存在している様な隔たりを感じると、家の主としての兄の姿を初めて知ったような心地がするのでした。彼は何だかつくづくと兄の家に感嘆してしまうのでした。