Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

土筆(189)

2018-09-08 23:00:25 | 日記

 茜さんは素知らぬ顔でそっぽを向くと、ふんふんとした仕草でお道化た感じになると、あらそうだったかしらと恍けて見せます。

「そんな昔の事覚えていないわ。」

と、この辺りはおばさん達の井戸端会議で聞きかじって来た応対の仕方を、見よう見まねで上手く熟して蜻蛉君に見せるのでした。

 「お前、…」

茜さんに文句を言い掛けた彼は、蛍さんの酷く憂鬱そうな顔に気付きました。成る程、彼女はとても嫌な事があった時の顔をしています。彼女のその顔は、蜻蛉君も過去に知っていました。

『それでは、茜の言った事はどうやら本当なんだ、茜の言う方が当たっているらしい。』

と思うと、彼は如何したらよいかと思案に暮れました。彼は蛍さんを怒らせるつもりは毛頭なかったのです。彼にすると全くの冗談のつもりだったのです。が、それを蛍さんが真に受けて真剣に怒ったものですから、ゲーム等で相当場慣れしていた彼にするとその様子が新鮮で面白かったのでした。彼はつい笑ったくらいですからね。その事が返って益々蛍さんの怒りを買った事に彼はこの時全く気付いていなかったのでした。

 彼はさりげなく茜さんの傍によって、如何したらよいか、それに嫌なら何であいつはさっさと家に帰らないのかと聞いてみます。

「ゲーム中だからよ。」

茜さんは事も無げに言い返しました。「途中で帰っちゃいけないじゃないの。だからあの子我慢してやっているんじゃないの。」さもそれが当たり前だと言うように、彼女が苛ついて言うので蜻蛉君はその答えに呆れました。