「幾ら茜でも教えて遣らないよ。」
彼は急にぽんとそう言うと、彼女からそっぽを向いて見せました。そんな彼の態度に、
「やっぱりね、そんな大事な事は秘密よね。」
茜さんはさもがっかりしたように、しょんぼりとして首をうな垂れてみせるのでした。
「そんな大事な話を私なんかには教えられないわよね。」
そう失望した感じで呟く彼女の寂しそうな横顔。幼くても空気に溶け込む様に映えるその新芽の美しさに彼は見惚れました。『これがおい先の分かる美人というものなんだ。』彼は無念の表情を隠せないでいました。
「ま、茜の事だ、本となら黙ってるんだけどな、ちょこっとだけなら教えてやってもいいか。」
蜻蛉君は太っ腹なところをみせるようにそう言うと、にっこりと笑って彼女と瞳を合わせるのでした。彼女も蜻蛉君と眼が合うと、彼のいたずらっぽそうな瞳に嬉しそうに微笑み返しました。
彼女が小声で「ありがとう、教えてね、」そう遠慮がちにお願いすると、彼は「そんな素直なとこが、俺は茜の好きなとこなんだ。」とぽつりと本音を漏らしました。だけど…、彼は静かに密やかに話し始めました。
除念に関してはハニーさんが専門家だという事や、彼女の家はそう言う家柄なのだという事。
「その為にあいつは何時も俺の傍にいるんだ、あの子が俺の代わりに、俺への怨念や邪念を受け持ったり、払ったりしてくれているんだよ。」
そう彼は言うのでした。
「それで将来も俺の傍にあの子は必ずいる事になるから、もうずーっとあれが一生俺のハニーなんだ。将来俺はあの子と結婚するんだよ。」
と言うのでした。
「茜は確かにあの子より美しいさ、俺も茜は好きなんだ。でも、茜じゃそうは行かないだろう、除念なんかできないだろう、だから茜はハニーにはなれないんだ。」
だから俺達の結婚は諦めてくれな。と彼はここで茜さんに体良く因果を含めるのでした。