Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

土筆(202)

2018-09-20 20:59:55 | 日記

 「幾ら茜でも教えて遣らないよ。」

彼は急にぽんとそう言うと、彼女からそっぽを向いて見せました。そんな彼の態度に、

「やっぱりね、そんな大事な事は秘密よね。」

茜さんはさもがっかりしたように、しょんぼりとして首をうな垂れてみせるのでした。

「そんな大事な話を私なんかには教えられないわよね。」

そう失望した感じで呟く彼女の寂しそうな横顔。幼くても空気に溶け込む様に映えるその新芽の美しさに彼は見惚れました。『これがおい先の分かる美人というものなんだ。』彼は無念の表情を隠せないでいました。

「ま、茜の事だ、本となら黙ってるんだけどな、ちょこっとだけなら教えてやってもいいか。」

蜻蛉君は太っ腹なところをみせるようにそう言うと、にっこりと笑って彼女と瞳を合わせるのでした。彼女も蜻蛉君と眼が合うと、彼のいたずらっぽそうな瞳に嬉しそうに微笑み返しました。

 彼女が小声で「ありがとう、教えてね、」そう遠慮がちにお願いすると、彼は「そんな素直なとこが、俺は茜の好きなとこなんだ。」とぽつりと本音を漏らしました。だけど…、彼は静かに密やかに話し始めました。

 除念に関してはハニーさんが専門家だという事や、彼女の家はそう言う家柄なのだという事。

「その為にあいつは何時も俺の傍にいるんだ、あの子が俺の代わりに、俺への怨念や邪念を受け持ったり、払ったりしてくれているんだよ。」

そう彼は言うのでした。

「それで将来も俺の傍にあの子は必ずいる事になるから、もうずーっとあれが一生俺のハニーなんだ。将来俺はあの子と結婚するんだよ。」

と言うのでした。

「茜は確かにあの子より美しいさ、俺も茜は好きなんだ。でも、茜じゃそうは行かないだろう、除念なんかできないだろう、だから茜はハニーにはなれないんだ。」

だから俺達の結婚は諦めてくれな。と彼はここで茜さんに体良く因果を含めるのでした。

 

土筆(201)

2018-09-20 09:40:08 | 日記

 「俺の一族はこの世の中の事をきちんと把握しているのさ、ちゃんと達観しているんだ。」

と彼は笑みを浮かべて言うのでした。茜さんはそんな蜻蛉君の自慢気で誇らしい様子に気付くと、首を垂れてもう1、2歩彼のすぐ真横へとにじり寄り、ぴたりと体の側面を彼の真横にくっ付けました。そしてぽそぽそと

「その除念とか言うのを、もう少し詳しく教えてもらえないかしら。」

彼女は益々興味深々で、彼に物をねだる様な調子で頼み込むのでした。

 本当に蜻蛉君が祟りの良い解消方法を知っているのかどうか、除念という物が本当にこの世の中に存在するのかどうか、この時にも彼女はまだはっきりとした確証は持てなかったのですが、彼のこれだけの余裕のある態度を見せつけられると、この話が本当にまんざら嘘では無くて、確かに何かしらの祟り等、怒る相手の怨念を上手く振り払える方法が有るのだろうと感じられるのです。彼女はどうしても真実を知りたくてたまらないのでした。

 蜻蛉君はそんな物欲しそうな茜さんの顔ををちらりと見ると、ふふんとばかりに笑いました。そして、

「信じる?この話を信用するのかい?この俺を?」

と声を掛けました。こくりと茜さんは彼の眼を見てここぞとばかりに頷きました。そして思わずごくりと唾を飲み込みました。『そんな方法が本当にあるんだ⁉』この時、彼の眼を覗き込んだ茜さんはそう確信しました。「信じるわ。」

 「教えてよ、ねっ、私とあんたの仲じゃないの。」

茜さんは熱心に彼に頼み込みました。如何しようかな…、そんな言葉を迷うような相手を焦らすような感じで言うと、彼は「本当に除念って言う物がこの世にはあるんだ。」と打ち明けました。

 茜は聞いた事無かったのか、除念という言葉。ま、大抵の奴は知らないけどな、除念なんて言葉。そんな風に除念の言葉を口にする度に、彼はいかにもこの世の中の事は達観した、物事大した事は無いと言わんばかりに、段々と態度も大きくなって行くのでした。