そうだったんですね、茜さんと蜻蛉君、幼くてもいやに親密だと思っていましたが、この時、お互いに結婚したい程の好き同士だったなんて、事実は小説よりも奇なりというものです。
しかし、話の内容からすると、如何やら蜻蛉君はこの様に幼い当時から相当な怨念を受けているようですね。かなり幼い蜻蛉君なのですから、彼自身に対しての恨みという物ばかりでもないのでしょう、一族の話も出ていましたから、彼の一族に対して降り注いでいる怨念と見るべきなのでしょう。子々孫々、末代までも…というよう怨念を受ける恨みがましい出来事が、歴史を遡るとご先祖にはあったという彼の家系なのでしょうか?
その後も蜻蛉君は、茜さんから蛍さんの嫌な事をあれこれと聞くと、ちらっと蛍さんに一瞥をくれました。
「気がそがれた。」
彼は嘆息しました。幾ら大の字が付くくらいに好きな相手でも、こう親戚の悪口を聞かされては堪らないのでした。
「もう帰らないか、今日の遊びはもう止めようぜ。」
と彼は茜さんの物言いを遮って帰宅を促しました。
「じゃぁ、さっきの話に戻って、途中で帰る仕方を見せるから、よく見てろよ。」
蜻蛉君が言うと、茜さんは心得たというようにきっと目を見開いて真剣な顔付きになり頷きました。彼女はこちらの方にも大きな興味があったのです。
「お願いね。」
茜さんが言葉を掛けました。