Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

土筆(206)

2018-09-23 10:36:40 | 日記

 まぁ、それはそれとして…、と、彼女は他の結婚相手の候補についても考え始めました。

「他も大事にしておかないとね。」

何処で自分の将来の当たりが付くか分からないのです。念の為にと、彼女は色々な嫁入り先を確保して置かなければいけないのでした。彼女は自分の将来のバラ色の生活について考える時、結婚相手の候補選びに余念が無くなるのでした。考え出すと、こんな所で一文にもならない気難しい従妹の遊び相手等、そうそう何時までもしていられないと思うのでした。

 さて、蛍さんの方は、自分の従姉に再試合を誘われて断り切れず、仕方無く、渋々次のゲームの準備を始めた所でした。茜さんは蛍さんの様子を窺いながら、折よく退散する頃合いを計っていました。彼女は如何にもふいっと思い付いたという調子で、1言、2言、従妹に帰宅が必要だと言い出しました。それから、一応一緒に帰らないかと誘ってみました。この時、彼女は臍を曲げている従妹が自分と一緒には帰りたがらないだろう事が分かり切っていました。事実従妹は後から帰ると返事をして来ました。『やっぱりね。』彼女は内心舌を出しながら、残念そうにそれじゃあねと別れの挨拶を告げました。茜さんはその場からドキドキの体で抜け出し、境内からもぎこちなく去って行きました。これで境内にはしかめっ面をした不機嫌な蛍さんだけが1人が取り残されました。

 「次の試合をしないなら、最初から誘わなければいいのに。」

茜ちゃんの方から誘ったくせに、等、1人ブツブツ文句を言いながら、蛍さんは何処まで癇に障る従姉なんだとぷりぷりしていました。『幾ら親戚だからって言ったって、私の我慢にも限度があるのよ。』と怒ります。

 しかし、事ここにおいて蛍さんにしてもこの広い境内に1人でいたい訳は無かったのです。唯、彼女にしてみると気に障る2人と、時を同じくしたり近くしたりして帰りたくなかったのでした。

 彼女は1人寂しくなった境内から一刻も早く離れ、直ぐにでも帰宅したい気持ちをぐっと抑えると、我慢してもう暫くここにいようと踏み留まっていました。それでも、もう少し、もう少しと痩せ我慢していると、結局何かしていないと恐ろしくなり、また手持無沙汰にもなって退屈して来るのでした。そこで彼女は自然にまた石投げの練習をする事にしました。あちらこちらと飛び歩くと、今度は穴が何処にあっても平気なようにと考えて、彼女はあれこれと遊びのシュミレーションをしてみるのでした。


土筆(205)

2018-09-23 10:02:54 | 日記

 幸いというのか、蜻蛉君の家は茜さんの家の極々近所にありました。彼女には兄達もいた事からその関係で男の子の遊び相手も多く、彼等の仲間に加わっている内に当の噂の主、蜻蛉君とも自然に近しくなる事が出来ました。その後の彼女の努力もあって2人は友達に成ったのでした。今や相当親密になり、今日のこの機会に彼女は彼の噂を確かめてみたのでした。

 『やっぱりね。』

世間の噂は当てになる物なのだと彼女は感じました。そして、やはり彼は噂通りの相当なお金持ちの家に繋がる子なのだと判断すると、自分の将来の結婚相手候補にこのまま挙げて置きたくなるのでした。『しかし、あの様子では無理という物だ。』と、因果を含められて直ぐの茜さんは無念にも悔しくも思いました。

 …それでも、何とか取りつく島は無いだろうか、そう考えながら、彼女は眼前の従妹がしゃがみ込んでくりくりと首を振る姿をぼんやりと眺めていました。静かなら何でもない子なのに…。『ふふふ、…』、茜さんはそんな従妹を、見た目だけは可愛い物だと思いました。ああやって黒いまあるい頭がふれふれと動くさまは小雀のようだと思い、そしてその瞬間、彼女はピン!と思い出した事がありました。

『そう言えば、あの子は小雀が好きだった!』

 そうです、蜻蛉君は小動物や虫など、可愛い生き物が大好きだったのです。成る程ね、それで彼はホーちゃんと遊んでいたいんだわ。茜さんはそう思い付くと、あの従妹を上手く利用して何とか自分がハニ―さんと入れ替われないだろうか等と考え始めました。たとえ入れ替われなくても、もう少し彼に近しくなって、何とか上手く裕福な財のおこぼれに与れない物かしらと考えたりしました。それ程までに、蜻蛉君は彼女が知っている男の子達の中では群を抜いてぴか1の裕福な暮らし向きの御曹司なのでした。