さて、茜さんと蜻蛉君の2人が話している間、蛍さんの方は妙に静かでした。石を地面に据えながら、蹲ると1人深く考え事をしているようです。実はこの時、彼女は何時、何故蜻蛉君という子と係り合うようになったのかを考えていたのです。
『如何してこんな子と遊ぶ事になったんだろう。』
過去から今迄の、色んな遊びの場面を思いだしてみます。直近の彼のいる光景から、彼女は段々と思い浮かぶままに過去へと遡って行きました。
『今年の冬は、勿論あの子は家にも遊びに来ていたし、昨年の暮れにももう遊んでいたから…、』
そう記憶を辿る内に、彼女はある光景を思い出しました。それは彼女の伯父の家へ遊びに行った時の事でした。何時もの従兄妹達の顔ぶれの中に、1人見知らない顔が混じっていました。蛍さんは『こんな子いたっけ?』と、自分の記憶には無いと思う顔に、不思議そうにその子の顔ばかり眺めていました。
『従兄妹の中にこの子は今までいたかしら?』
そう、その時にも、彼女は自分の記憶を過去へと辿っていました。そんな彼女の不思議そうな様子に気付いた茜さんが彼女に声を掛けました。
「この子はね、私の友達。」
「この家の子じゃないし、私の兄弟じゃない。親戚でもないから。この前、友達に成ってね。今この家に遊びに来てるのよ。」
「ホーちゃんと同じ年になると思うから。」
そう茜さんは蛍さんに言ったのでした。