Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

土筆(196)

2018-09-14 11:48:04 | 日記

 そいつは気の毒だったな。蜻蛉君は顔を顰めると、いかにも自分の方も痛そうに彼女に優しく言葉を掛けるのでした。しかし

「それはやはり偶然だよ。」

と、一寸片手を口にやると、その口の端の笑みを隠しながら事も無げに茜さんに言うのでした。敏感な彼女は彼のその忍び笑いにもちゃんと気付きました。そこで茜さんは少しムッとすると、

「でも、ほんとに、あの子を怒らせると怖いのよ。」

と苛ついた声で言うと次の説明を始めました。

 祟られるというか、取り憑かれるというか、人は死ぬと怨霊だけど、まだこの世にいる子だから生霊とか言うんでしょう、皆がそう言ってたわ。それになって憑りつかれているみたいだって、兄も伯父さんも、この場合おじは母方の兄の事よ、等と彼女は説明するのでした。

 「怨霊」の言葉が出ると、途端に蜻蛉君の顔は青ざめました。彼は茜さんからふらふらと離れて行くと力なくその場にしゃがみ込みました。その時彼の目は動きを止め、利発そうな目の光も消え失せたようになりました。彼は酷く沈んだ雰囲気に変わったのです。

「怨霊だって、嫌なこと言うなよ。」

と、茜さんに対して抗議する声もか細く小さくなり、気持ちも相当に沈み込んで闇の中に落ち込んでしまったような気配です。この彼の様子に、茜さんは気に止める様子もなくすまして次の言葉を続けました。

「祟りよ祟り!」

特にあの子にしてない事をしたとか、やってない事の濡れ衣みたいな物を着せると、それはもう、それはもう…


土筆(195)

2018-09-14 11:43:56 | 日記

 「それに、あの子の怖い所はそれだけじゃ無くて、怒らせた本人じゃ無い、その本人の別の家族や親戚にまで害が及ぶというか、相当痛い目にあうところよ。」と彼女は言うと、思わず自分の頬に手をやり摩ってみるのでした。

 「害が及ぶって?」

蜻蛉君はハッとしたように顔を上げると、茜さんの話に何か合点したような何かが符合したような雰囲気になるのでした。

「どんな事が起こるんだい?詳しく俺に話してみろよ。」

親友だろう、なっ、と、蜻蛉君は今迄の茶化すような態度から極めて真剣な様子に態度を一変すると、如何にも思いやり深そうに、さも彼女の手を取りそうな雰囲気で茜さんに詰め寄ると、懇切丁寧に問い掛けるのでした。

 「先ずは私の頬の傷よ。」 茜さんは彼の態度にしんみりとしながら説明しました。

 昔、兄の曙さんがあの子の頬を抓ったら、如何いう訳か私の頬にこの傷が出来たのよ、しかもあの子は片方だけだったのに私の場合は両頬なのよ、茜さんはさも恐ろしいという風に打ち明け話を話し出しました。

   「家の皆が言うには倍返しされたんだって、」

痛い目も倍返しだったのよ、その時両頬がすんごく痛かったんだから。しかも当の原因の兄では無くて、妹の私の方にお鉢が回って来たんだって。家の皆そう言って酷く怖がって震え上がっていたんだから。

 言い終えると彼女はその時の頬の痛みを思い出したようにまた自分の頬を撫でるのでした。


土筆(194)

2018-09-14 10:49:20 | 日記

 茜さんは蛍さんには気付かれないように、彼女の隙をついてぼそぼそと蜻蛉君の耳に何やら耳打ちしました。

「あの子、私があんたの事をあの子に紹介した事に気付いたわ。」

彼もこくりと頷くと、あいつ、お前に対して何か嫌な雰囲気だなと声を掛けました。元々は自分のせいなのですが、彼はいかにも茜さんの災難に同情しているという思わせぶりな態度を示しました。

「あの子、何でも根に持つタイプなのか?」

もしかするとそうなのかと、今まで全然そんな事のない、ぽっかりとしてあっけらかんとした明るい子だと思っていたと彼が言うと、茜さんはとんでもない、根に持つというどころじゃ無いのだと彼の言葉を否定しました。

 そして彼女は年下の従妹のそういった短所について、詳しい説明を彼に始めました。もうこうなると茜さんも蛍さんの陰険な視線になど構っていられません。蜻蛉君と並んで立つとぼそぼそと早口で端的に喋り始めました。

 「あの子を怒らせると怖い!」

「睨まれるだけじゃ済まない。何か嫌な事が起きる。こう気も重くなるし。ズンと来る」そう彼女が言うと、彼は気のせいだろうとそっけなく言うのでした。そこで彼女の方は、いえいえという風に首を振ると、「気のせいばかりじゃ無くて、実際何か怪我をしたり、嫌な事が起こったりしてね。」と、説明を続けました。そこで蜻蛉君も再び彼女の言葉に取り合わず、偶然だろうというのですが、その彼の声は段々沈んで来るのでした。加えて彼の動作も屈み込んで仕舞い、段々と物静かになって行くのでした。 茜さんの説明は続きました。


暗黒と星の輝き

2018-09-14 09:29:03 | 日記

 暗い夜空に続く深淵と無数の星の煌きでしょうか。勿論スペース物の映画やテレビドラマも幾つか頭に浮かびます。

 身近な天体といえば月や太陽、どちらかと言うと夜の月ですね。暗い宇宙のイメージに昼間の太陽は連想しづらいのかもしれません。夜空にお月様、月といえば現在はクレーターを思い浮かべてしまいますが、幼い昔なら月といえばうさぎの餅つきでした。黄色い月に白いうさぎと臼と杵。月見のお団子、今年の中秋の名月は何時でしょうか?(9月24日でした。検索済み)

 花より団子なぬ、月より団子、宇宙よりお餅、今ならおはぎの時節でしょうか?おはぎか…、作ろうかしら。

 秋分の日の次の日は十五夜。お萩と団子が連続ですね、今年は。