茜さん達にとって蜻蛉君は他所から来た子、この地域の外から来た家族の子でした。彼の両親と彼が今住んでいるご近所の環境はよく知っていても、そのまた親の家系、祖父母に当たる家族が如何いった家柄の家系になるのかは皆目見当が付かないのでした。
うん、と、蜻蛉君は言い淀みました。自分でも今どの国の言葉を喋っているのか分かっていない時があるのです。そのくらい、彼は幼い頃から何ヶ国かの国を訪問し、その地に暫く滞在して来たのでした。そしてその国の現地の子供達とも、ここで遊ぶのと同じくらいに親しく遊んで来たのでした。
茜さんは考えました。聡い彼女は直ぐに
「あんた、外国人なの?」
と彼に問いかけました。茜さんは在日の外国の人々がいる事を知っていました。彼等の子供達が母国語と日本語を交互に話せることも知っていました。それで蜻蛉君も日本語と、両親どちらかの母国語を話せるのだと察したのでした。
『それでハニーなんだ。』
彼女は思いました。蜻蛉君が、彼ととても仲の良い女の子の事を「ハニー」と呼んで、「僕のハニーなんだ。」と彼女に紹介してくれた時の事を思い出しました。
「だから、茜とは友達だからね。」
と、彼は彼女の目の前でハニーさんを交えてそう話してから、仲よく3人で遊び始めたのでした。