「止めてくれって言ってるだろ!」
それは茜の親戚や、身内の中だけの話しなんだろう、親戚同士だけの事なんだろう。それだけの事なんだろう。蜻蛉君はもううんざりだと言わんばかりに振り返ると、茜さんをしかめっ面で見詰めました。
「…ならまだいいじゃないか。」
ぽそりとした言い方でした。
彼は一呼吸置くと、こっちは聞きたくないって言ってるんだよ。と、さも自分で自分の気持ちを落ち着けるように普段に近い声で低く呟きました。そして、再び彼女に背を向けると俯いて、もうそんな話言わなくていいからなと命令口調で言うのでした。
「こっちはそんな話なんか山ほど聞いて知ってるんだ、しかも身内だけの事じゃ無いんだ。…飽き飽きだよ、もう聞き飽きているんだ、うんざりだよ。」
ここで彼は暫し沈黙するのでした。もう少し気持ちを落ち着けたかったのでしょう。そして、
「祟られたなら祟られたでいいじゃないか。」
「そうなったらそうなったで、どうするか考えるまでの事だよ。」
と、さも怖がっている割には妙に場慣れした言い方をするのでした。そしてその後、彼はぐいっと身を起こしてピンと背筋を伸ばしました。幼くてもどっしりと座って構えた彼は、何やら余裕のような物さえ感じさせるのでした。