Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

土筆(197)

2018-09-15 16:06:36 | 日記

 「止めてくれよ!」

彼は蚊の鳴くような声でうわっ!と声に出すと、両耳に手をやりました。

「もう話さなくていいよ。」蜻蛉君は言いました。「そんな話これ以上聞きたくないから。」彼は首を振ってさも苦しそうに言いました。しかし、茜さんは途中で話を止めるのが嫌な性分でしたから、話し出したからには最後まで話しを続けたいのです。

 「本とに祟りってあるのよ。」

茜さんは蜻蛉君の背に面と向かうと言いました。そして何かに憑りつかれた様に半ば心ここにあらずというような、地に足のつかない状態になると、生真面目な顔をして遠くを見つめるような目つきになりました。彼女はこれまでに起きた過去の話しを掻摘んで話し続けるのでした。

 あの子関係で、あの子に何かしたり、今日みたいにして無いのにしたって言うと、本とに皆、何かあるのよ。怪我をするとか、それも痕に残るような怪我だもの、目に見えて嫌な物だって、私の頬のみたいなやつよ。皆何で…って、あの子が、親戚なんだ、って、ほら、付き合いとかあるし、嫌々、それでもあの子と係ると、何かかんか、やっぱり色々あって。…分かるでしょう?

 それにここら辺は昔、武家屋敷とかあった場所らしいから、その頃のお侍か奉公人で、無罪か何かでご主人にお仕置きされた人で、無念な怨霊か何かになった霊があの子に憑いてるんじゃないかって、そう皆で言い合ったりした時もあったのよ。または、皆そんな子だから、前世は何か人の罪の濡れ衣を着せられたりして、無念の内に死んで浮かばれないで霊になってさ迷っている内に、またこの世に縁があって生まれ変わって戻って来た子なんだろうかって。言ってるのよ。