『これがよく聞く子供の反抗期なのかな?この年で?。』もう親の言う事に逆らうとは、こんな時どう対処するのかまた調べておかないといけないなと、父はこの場は、子の相手をするのはここまでにしようと思いました。
押し黙った父の様子に、このいきで一気に父のお小言の難を逃れようと、蛍さんは畳みかけて言うのでした。
「それに、お母さん、私と遊ぶよりお父さんと遊んだ方が喜ぶと思う。」
お父さんとお母さんは夫婦なんだから、という娘の言葉に、あんぐりと口を開けて目だけが笑った父でした。
「あらまぁ、…。」
お前、なぁと、父はあとの言葉を飲み込むと、無言で娘の頭を撫で、
「お前はもう家に入って、お祖母ちゃんと遊んでいなさい。」
とだけ言い残して照れたような仕草で玄関から出て行くのでした。後にはしてやったりというような満足気な笑みを浮かべた蛍さんだけが玄関に残されていました。
ただいまと蛍さんが玄関から高い敷居に上がり、最初の部屋に入って行くと、その部屋の入り口の戸のすぐ真後ろに祖母が立っていました。蛍さんはそんな戸の影直ぐに祖母がいたのでびっくりしました。
「吃驚した、お祖母ちゃん、そんな所にいたの?」
と尋ねる蛍さんに、無言で顔を背けるようにした祖母です。蛍さんは、何時も笑顔で愛想の良い祖母のそう言った行為を初めてみる気がしました。この時、彼女は祖母に対して機嫌を損ねるようなことをした覚えがなかったので何だろうと思いました。
「お祖母ちゃん、如何したの?」
機嫌が悪いの?私お祖母ちゃんに何かした?そう幾つか尋ねる蛍さんに、彼女はぽつりと独り言だけを漏らすのでした。
「子は鎹か…」