ドクター・マルたちを店に残して、このエリアの大通りを歩いて来たシルでした。休憩コーナーのベンチの所まで来ると、彼女はそこに配置されていた楓の木の下のベンチに腰を下ろしました。
そこでシルはふうとひとつ息を吐くと、今出て来たパーラーの内部、そこにいるマルとエンの2人の深層心理を観察する事にしました。丁度ベンチの傍らには噴水の水盤が置かれていました。シルはその水盤の水面に目を落とすと、彼ら2人の会話や彼等の内面に蟠っている心理を映し出してみます。
シルが見た彼ら2人の故郷での様子、星での過去の経緯はこの様な感じでした。
マルとエンの兄弟は、容姿は全く同じ者同士でしたが、性格はほぼ逆と言ってよいようです。物に拘らない自由で夢想家の兄のマルに対して、エンの方は周囲の目を気にするシャイな現実派でした。
先程ドクター・マルに聞いた通り、彼等兄弟はお互いの区別の為に片方が常に外見を変えていましたが、何時も地味な容貌にしていて、彼等の星の星人然として周囲に溶け込んでいたのがエンだったようです。マルは殆ど生まれた時の儘、生来の姿で通していたようです。その為マルは常に明るい目立つ容貌をしていました。周囲から浮き立った彼は、星ではとても目立つ存在だったようです。
また、彼等の星の星人が協調的で連帯的なのに対して、エンはともかくマルの方は独創的で個人主義的、妥協して物に取り組むことが無い為何でもよく出来たのでした。
そんな2人の基礎学習時代、以前シルが読み取ったマルの記憶の中に出て来た女の子が登場してきます。彼女は何くれとなくマルに言いがかりをつけては付きまとっている様子です。途中で妥協して周囲に合わせてしまうエンとさえ、マルは成長する内に合わ無くなってしまったようです。元々星の住人とは合わなかった彼が、兄弟とも合わないのでは、彼も星にはい辛いかった物と見えます。