Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

マルのじれんま 12

2020-04-14 15:00:17 | 日記
 すると、シルはマルに声を掛けました。

「お互いに、似ていない双子なんですね。」

それに対して、いや、とマルが彼女の言葉を否定すると答えました。

「見分けがつくように、常にどちらか一方が身なりを変える様にしているんだ。」

今日は船の皆が私の方を見慣れているからと、エンの方で濃い目に扮してくれたんだ。元の容姿は2人同じなんだよと、マルはシルに説明しました。

 「まぁ!。」

シルはびっくりして声を上げました。

「ではお2人は、全く見分けが付かないんですか?。」

と、そこまでは感応者の彼女でも、なかなか読み取れなかった真実なのでした。そこでシルがエンの苦労をねぎらうと、彼は、故郷の星では皆この容姿だから自分は常に外ではこの形でいる、慣れているから一向に構わない。と、別段彼女の言葉を気に留めること無く答えるのでした。

 「扮装は何時もなんですか。」

エンの言葉でしたが、シルは表面の言葉だけでは無い、彼の内面の大きな気苦労を読み取るのでした。兄は自由気ままに気楽に宇宙に出て行ったのに、弟の彼は故郷の星に残り、両親や家族を看る責任を負っているのでした。地に足が付いた様な彼の性格が読み取れた彼女は、思わず視線をテーブルに落とすと深い溜息を吐きました。『一家の主は何処も大変だわ。』

 そんなシルの様子に、エンはにこにこして彼女を見詰めました。彼にはマルが、面会の場に夫婦連れで来なかった事が不思議でした。彼は出会ってから今迄、時折不審そうな視線を兄のマルと、兄の同僚だという女性、シルに交互に投げかけていました。が、事ここに来て、彼は兄マルの方の事情に薄々勘付いたのでした。これは如何やらと、この様子では兄さんは義姉さんと別れたらしいと察しました。

 だとしたら、『何故兄さんは言ってくれなかったんだろう?。』。そんな事をエンは寂しく考えていました。そこでそれを読み取ったシルは、気を回してマルの肘を突きました。

「ドクター、弟さんにお話される事がお有りじゃないですか。」

と、マルに打ち明け話を促すのでした。
 
 マルはちょっと驚いた顔をして彼女を見やりました。そうして、彼女が無言の儘彼の顔を見て、『正直に、正直に』と、パクパクと口を動かすのを眺めていましたが、ああと気が付くと、いやぁ、ははははは、と、照れ笑いをしてから、

「実はね、エン、お前に話してない事が有ったんだ。」

と、自分の結婚が破綻した事を初めてぽつぽつ弟に打ち明けるのでした。

 エンは兄の話を聞いて、やはりそうだったのかと兄に気の毒そうな視線を送りました。

「兄さん夫婦の事だから、私には何も言えないけどね。」

彼は兄嫁がとても美しい人だったというと、彼女は料理も上手かったのに、残念だったね兄さんと、無念ながらに慰めの言葉を添えるのでした。

マルのじれんま 11

2020-04-14 13:23:39 | 日記
 「おじさんの髪、私と似てる。」

不意にエンの横にいた女の子が声を出しました。こらこらと、直ぐにエンは女の子をたしなめました。

「何時も言っているだろう、大人が話している時は、傍で声を出しちゃいかん。」

流石に父親らしく、威厳を持ってエンは娘を諭すのでした。
 
 女の子の方は案外ケロッとしています。屈託無く明るい笑顔のままでいました。そうしてマルの金色の髪やその明るい緑の瞳に目を遣って眺めています。

 確かにね。シルは思いました。女の子の髪や瞳の色は、彼女の言う通りマルと似通っていました。ただマルの巻き毛の房に交じる褐色の部分が、女の子の場合はもう少し黄色がかった色をしていました。彼女の瞳の色も、マルの明るい緑色の瞳とはまた少し違う緑色で、色合いで言えばコバルトグリーンの色なのでした。とは言え、伯父、姪、共に明るい緑の瞳だという事に何ら変わりはありません。

 マルは、物怖じし無い自分の姪の言葉に、思わずニコニコと相好を崩しました。

「まぁ、いいじゃないか、エン。」

それより、この子の名前は?、まだ私は教えてもらって無かったねと、マルはエンに姪の名前を教えるよう促しました。

「まぁなぁ、…」

エンは何だか曖昧な返事を兄にしました。そして、「実は、」と浮かない顔つきで兄に切り出しました。

「私達と同じでね。」

こう言うと彼はマルの顔色を窺いました。するとマルもえっ!と、何やら驚いた顔で、彼は妙にざわついた雰囲気になりました。

 「それじゃぁ、もしかすると、」

マルがそこ迄行った時の事です。エンの娘がお店の入り口に注意を向けると、「ここよと!。」と、大きな声を出しました。そうして彼女は自分の手を入り口に向かって盛んに振り出しました。

 テーブルにいた大人達3人が店の入り口に目を向けてみると、何と、そこにはエンの娘と同じ様な年恰好の女の子がもう1人佇んでいました。彼女はマル達に気付くと少しはにかんだような笑顔を浮かべました。そしてエンの娘に軽く手を振って応えると、足早に皆のテーブルまでやって来ました。
 
 この今テーブルの傍までやって来た女の子は、シルが見るとエンの娘と背格好や顔形がかなり似通っています。が、この子の髪の色や瞳の色は、エンそっくりの濃く深い色合いなのでした。エンはやってきた女の子に、マルを自分の手で指し示すと言いました。

「マル伯父さんだよ。お前の名前を言っておくれ。」

そこで、髪の色と瞳の色がエンそっくりの女の子は言いました。

「マーです。マル伯父さん、初めまして。」

するとエンの横で椅子に腰かけていた女の子も立ち上がり、

「ピーです、マル伯父さん。私もよろしくね。」

と、自分の名前を名乗りました。
 
 エンは恥ずかしそうな照れ笑いをその顔に浮かべると、「そう言う事なんだよ、兄さん。」と、兄のマルの顔を見詰めました。「そう言う事なのか。」、とマル。シルはというと、マルの横で驚いた顔でいましたが、彼女は皆の事情がほぼ分かると、へぇえという顔になりました。

「親も子も双子同士なんですね。」

と、マン・ソウダネ一族に語り掛けるのでした。

今日の思い出を振り返ってみる

2020-04-14 13:13:13 | 日記

親交 33

 「大丈夫ですか?」2、3日して、紫苑さんの家に電話が掛かって来ました。これは、約束していた日に紫苑さんが図書館に現れず、紫苑さんの電話を取ったからという司書の人から、紫苑さん......

 今日は良いお天気です。花曇りというべきかな。時々曇ります。家の花も満開という所です。