ドクター・マルは、親しくなった地球人男性と約束した、何時もの落ち合う場所へとやって来ました。既に地球人男性、紫苑さんという苗字を持つ人間ですが、は、来ていました。Tシャツにジーンズという様なラフな格好をしています。
『これがとっちゃん坊屋というものだな。』
マルはそんな事を思いました。紫苑さんはもう初老の男性ですが、現役時代は大学の教授をしていたのです。彼が教えていた学生達に合わせて、気さくな面もある彼はこういったラフなスタイルでいる事も多かったものです。特にレジャーを楽しむ時は尚更でした。
マルにしてみると、未だそういった実地の現場での経験からくる知識は皆無なのでした。実際、そう思った彼自身、地球上での彼の職業の衣装、白黒の僧衣など気込んでいます。また、手にはびくと竹製の釣竿を携えていました。今日は公園でフナやコイを釣るという事でしたから、船の地球上のデータを調べてこの格好にしたのでした。
さて、やって来たマルのこの姿を見て、紫苑さんは呆気に取られた様子で片眉をしかめました。そこで歯に衣着せぬ物言いの紫苑さんは言いました。
「それで釣りをされるんですか?、商売道具でしょう、汚れませんか?。」
しかもマルの着こんでいる着物はピカピカの新品という具合なのですから、紫苑さんに限らず地球上の誰が見ても怪訝で怪しく思った事でしょう。また、マルはあれ寺の和尚さんを気取っていましたから、この贅沢さには紫苑さんも『彼は普段金が無い無いと言いながら、この様子では案外と裕福な寺なのだな。大口の檀家が有るのだろう。』と、踏んだりするのでした。