「私は僧侶の身ですから…、」
マルは内心緊張しながら表面澄まして答えました。
「女人の事については私の口からは何とも。」
こう言ってから、彼はここで漸く上手く答えられたと、ほっと胸を撫で下ろすのでした。
彼は船で僧侶について、またその宗教については以前からかなり深く学習して来ていましたから、この点について前もってリサーチして来ていてよかったと、満足気に胸の内で呟きました。
彼は考古学的な事や、色々な星々のそれぞれに独特な文化も大好きでしたから、今の船の同僚のミルとこの点で嗜好が合い親しくなったのでした。そのミルから、ミルがこの地球上で親しくなったという、地球人男性の紫苑さんの事を頼まれてしまったのでは、彼も体よくは断れなかったのでした。
また、彼自身も地球人という人間にとても興味があったのでした。この星の文化的で教養の有る人物の1人である紫苑さんは、マルにとってもかなり興味深く、またあらゆる面で環境の違う所で育った2人でしたが、彼はマルにとって何だか気心の知れた気の置けない人物に思えるのでした。その為マルは、現在まで綿々と彼との付き合いを深めて来たのでした。『この点ミルに感謝しないといけないなぁ。』、マルは思いました。
さて、場面変わって、はははははと声を上げて笑う紫苑さんに、いやいやと照れる様に苦笑いする円萬さんがいました。2人は先の一件で、彼等の一度気まずくなった空気がまた元の通り和んだのを感じていました。2人は相変わらず堀端に腰かけていましたが、程無くして円萬が、遠慮がちに連れの元教授に口を開きました。
「紫苑さんの方は如何ですか?。奥様とはおしどり夫婦でおられたようですが、2人の馴れ初めなど、この機会にお聞きしたいものですな。」