Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華3 83

2020-12-01 17:53:09 | 日記
 息子を輸した私の祖父は、ちらりと不安そうな視線を私に投げ掛けた。私はというと、案の定とでもいうのだろう確りと彼等の遣り取りを見、聞き、理解していた。
 
 如何したというのだろう、私はこの時晴れ渡った空の様に聡明な思考を持つ事が出来た。それが自分でも自らに不思議だった。高い青空、澄み渡った秋空の様に気分も頭も冴えていた。家族の思惑が手に取る様に分かった。この時の私は、自分はこんなに利口だったのかと呆れる程に自負していた。
 
 祖父はそんな私の抜ける様に爽快な顔付きを見て、思うところが有るらしく、厭った色を浮かべる目付きになった。すっと私の父の影に身を隠す風でいて彼は暫し思い止まった。その儘祖父は思案に暮れる気配となった。そうして、まぁ、後の事は後で考えると仕様、文字通りな。緊急に合わせないと、そんな事を傍の息子に言うので無く、祖父は如何やら自分に言い聞かせたようだった。
 
 それから祖父は、お前の子供の方が先だ、直ぐに寝床に運んで寝かせなさい、と、息子である私の父に指示すると、階段へと私の父を向かわせた。父は如何いう事なんだかと不満そうに呟きながら私の前に来た。彼はおいでと私を抱こうとしたが、祖父がそれは無理だろうと父に注意した。
 
 「多分手に力がないだろう。」
 
お前、その子が抱えられるかい。それも無理だろう。そう言うと、こんな時は担架が有れば便利なんだがと、それに代わるものが家に無いかと彼は思案を始めた。彼は自分の思案に夢中になるあまり、階上の息子の様子に気を配る事にお留守となってしまった。
 
 父はそんな祖父の様子に、父さん何をそんな取り越し苦労して、あんな調子では、父さんも歳だなぁ。要らぬ心配をして。そんな言葉を呟いた。それから、お祖父ちゃんはだっこが気に入らないんだろう。そう私に言うと、おんぶしようと私に彼の背を向けた。私が父の背に抱きつくと、彼は自分の首に手を回し、お前の手と手を確り掴んでいる様に、と命令した。私は父の言う通り、自分の手を彼の首に回すと、片手で自分のもう片方の手首を掴んだ。掴めるかい?、父が確認して来た。うん、大丈夫と私は答えた。
 
 さぁ、と、私を背に背負った父が階段を上がり始めた。2、3段上がった彼は、ふうと息を吐き、お前本当に重くなったなとため息を吐いた。
 
 「おい、大丈夫なのか⁉︎」
 
私たちの様子に気付いた祖父が声を掛けて来た。大丈夫そうだ。父が返事をした。その途端、私の体が大きく傾いた。それは私と父の2人の体だった。父は狭い階段でバランスを崩し、手すりを掴もうとして掴み切れず、私達の体はふわっと宙に舞った。
 
 ゴン!、私の頭が1階の天井に当たる梁に打つかり威勢よく音を立てた。私の目に、祖父の丸く大きく見開かれた目をした顔が映った。と、ドスーン!と、音と同時に体に振動を感じた私は、間近に色褪せた畳の目を目にして横たわっていた。
 
 大丈夫なのかい、反射的に祖父が声をかけて来たが、彼は直ぐに思い直した様に大丈夫ではあるまいと嘆息した。だから言ったのに、親の言う事を聞か無いから。そう彼は愚痴を零すと、大体お前はいつもそうだと私の父に小言を並べ始めた。私は畳からそうっと起き上がった。何事か、怪我しなかったかと、痛いところは無いかと確かめながら、恐る恐る身を起こした。

今日の思い出を振り返ってみる

2020-12-01 17:51:20 | 日記

うの華 106

 母の手には何やら布の切れ端の様な物が見えた。私は何だろう、見た事のない物だなと思った。母はそんな私の顔を見て、にっこり笑ったかというとそうでは無かった。むすっとした感じで愛想無い......

 思い出を振り返るには、遅いログインになりました。可なりパソコンの調子が低下しています。メールから来る思い出の振り返りには、その内アクセスできなくなりそうです。