Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

土筆(83)

2018-05-28 10:07:19 | 日記

 未だ幼くて世間経験のそうは無い純真な従妹を、年上の自分が小手先でいい様に揶揄ったのだという後ろめたさも加わり、彼はこれ以上従妹を遣り込めてやろうという様な我の強い気持ちがすっかり失せてしまいました。それだけで無く、自分の心の闇に触れ、間近に迫っている夜の闇を感じると、すっかり怖気付いてしまいました。

 「今日の所は見逃してやる。」

そんな言葉だけを一言、彼は強がって言うと妹の所へ振り返り、大声で「もう暗くなるからな、暗くなる前に帰るぞ。」そう言うと、ぱっと身を翻しだーっとばかりに一目散、施設の出口目指して駆け出しました。もう彼の眼中にも脳裏にも後ろにいる従妹の事は有りませんでした。それっ切りでそっちのけという態度でした。

 彼は行き掛けに広場にいた2人の男の子達にも声を掛けました。

「もう暗くなるからな、お前達も早く帰れよ。」

そう年上らしく声を掛けると、「それ、それ走れ!」とばかりに音頭を取って、いざ進め!とわーっと皆で広場から駆け出して行ってしまいました。

 さて、壁の前に1人取り残された形の私です。ポカンとして皆の去っていく様子を眺めていました。そして『私の質問は?』と、首を傾げました。こんな事は初めてでした。確かに自分の質問の返事がもらえなかった事は以前にもありました。でも、その時には自分が質問をした相手、大抵は父でしたが、「返事は後で、」等言うと、必ず後できちんと答えてくれるのでした。それが、今回は質問をした相手の従兄が、後で返事をする等言わないで行ってしまったのです。しかも、「見逃してやるだなんて、返事が無くて見逃すのはこっちの方じゃ無いの。」私は不愉快に思いました。全くこんな妙な事初めてです。


パターゴルフ程度です

2018-05-28 09:54:56 | 日記

 パターゴルフしかしたことがありません。それでも1打でホールインワンすると、施設から缶入りのお茶などの景品がもらえました。

 最初は子供にせがまれて出かけて始めてしました。簡単に出来て、運動量もそう大きくないので、その後2、3回行きました。2回目にはホールインワンが出て、自分でもへーっと思いました。それですっかり楽しくなりました。調子よく指定回数で入ると気分もるんるん、戸外で気分よく何コースも回れる所もいいですね。池ポチャなどもあり、笑えます。

 1度は小学校時代の友人と行きました。その日は偶然2回もホールインワンになり、一緒だった初体験の友人に気兼ねしてしまいました。最期に自己申告してお茶を貰って、「次回はきっと○さんもホールインワンが出るよ。」とお茶を手渡して、励ましてきました。その後は全然行っていません。思い出すとまた行きたい気がしてきました。


土筆(82)

2018-05-26 08:54:44 | 日記

 そうです、この日の空は一部気流が速く、雲が走っている所がありました。彼が気付かない内に、空には新しい雲が現れ、太陽もそんな流れの速い雲の交錯する中で、現れたり隠れたりしていたのです。先程彼の視界が暗闇に落ちた時、彼は丁度雲の切れ目が作った日光の柱の中に入ったのでした。彼は突然スポットライトを浴びたようで、光の外側が闇に落ちたようになり、全く見えなくなってしまったのでした。彼はこの光の柱の中で、遮られる物無く太陽のみを見上げていたのでした。この時の彼にはそんな事は未だ分かりませんでしたが、雲のせいで夕日の光が差したり遮られたりするのだという事は分かりました。

 なあんだ…、と彼は安堵しました。『夕日の作る影が出たり隠れたりしてるんだ。』正体が分かれば怖いことはありません。彼は従妹の方へ目を向けました。その後ろに映し出された彼女の影を確認してみます。塀に出来た影はまるで影の中心の頭の部分、一番暗い部分に如何にも瞳が有るように感じました。更に、不思議な事にその瞳は如何にもこちらにいる自分の目をじーっと真一文字に見詰めて来るかの様に彼には思えました。

 『これは影だ。従妹の影なんだ。』

彼はそう自分に言い聞かせて、目の錯覚だと思ってみますが、内心には恐怖が忍び寄って来ます。何の異変も無く人の影だと分かっていても、彼にはその影が異様に赤く揺らめいて見え、影の暗い部分に目があり、その目が自分を睨んで見えて来るのです。

 『もう止めだ!』彼はもう従妹の影を見る事を止める事にしました。真偽を見極めるより、自分にとって嫌な物を見る事を止めて、それ以上訳の分からない事に関わり合わない事にしたのでした。また、近付いて来る夕刻の闇も、彼の恐怖心に忍び寄って来ました。気温も低下して、彼はぶるっと身震いするとすっかり肝が冷えて仕舞いました。


土筆(81)

2018-05-25 10:48:33 | 日記

 『何時もとお日様も違うな。』

この時彼は何時もとは違う夕日の見え方を疑問に思いました。が、今日1日の疲労がそれ以上考えようとした彼の頭の回転を止めました。太陽が空にあるのだから世の中が暗くなる道理は無い。彼はこの様な太陽の見え方の方が、自分が今迄気が付かなかった事なのだろうと思う事にしました。

『自分だってまだまだ人生始まって間もないんだから、ひよこの仲間さ。』

そんな点大して妹達と違わないな。そう彼は思うと、誰に見せるという訳でも無くふふんとニヒルに笑ってみせるのでした。

 「脅かすなよ。」彼には実際にこの時何が起こったのか全く分かりませんでした、が、『世の中何も異変は無い、空に太陽があるのだから何でもないのだ。』と、再び笑顔を取り戻すと、にこやかに従妹の方向へと向かい始めました。

 すると、彼の目には一瞬光が明滅したように感じ、従妹の姿が見え隠れして、従妹の後ろの空間に朱や赤い光線がぱらぱらと交錯したと思うと、先程見た閻魔様が一瞬映り、そして消えると再び現れ出てて、彼の目の前に確りと浮き上がりました。それは先程より明るい朱色に見え、場面の切れ目よく立ち上がって来たのでした。彼は戦慄しました。

  一瞬ぞっとした彼でした。が、今回、彼はこの閻魔様の現れ方が、自分のよく知っていた影絵の投影と、よく似た硬い型の動きをしたのを見逃しませんでした。そこで、彼は勇気を出してよくよく閻魔様を見詰めてみました。するとそれは、夕日が従妹の後ろの塀に作り出した彼女の影だと気付きました。広場にある木造りの長塀に、重複して朱色、橙色、オレンジ色、そういった如何にも炎の様な色合いの影が時の変化と共に交錯します。影は巨大に映り始め、と、その中心に彼女の身長の何倍かの大きな暗い影がすっくとばかりに直立して見えて来ました。

 彼は空を仰いで夕日の位置を確かめました。一旦晴れ渡っていた夕空にはまた幾つかの雲が見え、それらは交錯し、可なり速いスピードで流れて行く物も目に映ります。『また雲が出て来たんだ。』彼は思いました。


土筆(80)

2018-05-24 10:16:32 | 日記

 彼の方はそのまま帰るつもりでいました。親戚だと思うと、誰憚ること無く年下の従妹を思いっ切り揶揄う事が出来たのです。おかげで彼は頗る機嫌が良く、その日の外遊びを愉快に終える事が出来たつもりでいました。意気揚々と帰宅する彼の目に、赤く染まった夕日が麗しく映ります。

「綺麗だなぁ。」

と感嘆して彼は夕日を見上げました。

 そこへ、後ろからやり込めたはずのおちびさんの声が掛かったのです。最初は気にも留めていなかった声でしたが、2度目の問いかけには彼もドキリとしました。しかし、何だおちびのくせにと思うと彼は気を取り直し、気楽に構えると振り返って彼女の方を見ました。その瞬間、彼はぎょっとしました。彼の目に、赤くメラメラと燃え盛る火炎に包まれた、怒りの形相をした閻魔様の姿が見えたからでした。思わず彼は目を見張り、その後手で自分の目を擦ると、まさかねと、その正体を見極めようとして恐る恐る目を開けてみるのでした。

  『そんな馬鹿な事、こんな事実際に起こる訳無いよな。』

彼はそう思いながら、閻魔様がいた辺りを眺めてみます。するとそこには、先程目に映った閻魔様の姿は微塵も無く、彼の従妹と少し離れた横には遊具、そして視界後方には長い塀が何事も無く横たわっているだけでした。彼は尚もきょろきょろと周りを見回してみました。しかし辺りには何も変わった物はいなくて、やはり何も変わった所はありませんでした。

 『やっぱり。さっきの物は見間違いだったんだ。』

彼はほっと胸を撫で下ろしました。そして再びにやにやすると、生意気にも年上の自分に対して質問をして来た従妹に、もう一丁揉んでやろうと思いながら近付いて行きました。その時です。辺りが急に暗転しました。彼の視界が闇に包まれました。彼は驚き、立ち止まり、思わず夕日のある辺りを見上げました。そこにはちゃんと大きな丸い夕日がありました。しかし夕日は彼の目一杯に広がって見え、飛び込むように彼の目に映って来ました。