Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

有ります

2018-05-24 09:29:25 | 日記

 あります。下宿の悪友達に乗せられて書いてしまいました。

 事の起こりは、入学して下宿したある日の春の夜長?に、新入生の皆で語り合っていた時、誰かが、皆自分の片思いの好きな人に手紙を出して告白してみよう!と提案し、皆、興味深くその話に乗り、書こうという事になりました。結果も報告しあうという事にして、私も出してみました。

 きちんとお返事が来ました。ありがたい事です。結果から言うと脈無し、全然思いも掛けない告白になった様でした。おかげでさっぱりと気持ちが整理できました。こんな点は下宿の皆のおかげです。何でも集団だと心丈夫なものですね。

 でも、今から思うと、学生の悪ふざけに近い物だった気がします。成功したなら成功したで、その後のお付き合いの経過、文通内容も皆の話のタネにされかねない雰囲気でした。…実際、何人かそうなっていました。発起人が悪いですね。若い時には分かりませんでしたが、人生経験を経ると分かります。

 


土筆(79)

2018-05-23 11:58:52 | 日記

 「もう、他の人の物なの、あの太陽よ?」

私は指さして従兄に夕日を示しました。従妹はにんまり笑うと「そうだよ、あの太陽だよ。」と答えるのです。私は心底驚きました。冗談という物はもう分かっていましたから、従兄の雰囲気からもしかすると、と思い、「冗談?」と尋ねてみました。すると彼は至極真面目な顔付きをして、まさかというように驚いて見せると、これはまた意外な事を言うというように「本との話だよ。」と言うと、やや立腹した顔つきをして私の目を見詰めて来ました。

 彼は内心可笑しくてたまりませんでした。幼い子の真面目な顔付や真剣な動作が面白くてたまらないのでした。自分の言葉に右往左往する様子や、そんな子を自分が手玉に取っているという優越感、快感が堪らなく愉快なのでした。彼は続けました。

「だからあの太陽は、絶対君の物にはならないんだ。」

決定的!というように駄目出ししてそう言うと、従妹に真面目な顔をしてみせます。が、やはり目は笑ってしまいました。

 この瞬間、『嘘だ。』と私は思いました。よく大人の人が、この場合母が、時には父も、自分に対して信じられないような話をして「これは本当だよ!」と言う時、同じような光を目に宿していました。この光が目にある時、大抵は後で「冗談だよ。」「からかったんだよ。」「さぁ、騙された。」等言って、大人は面白そうに笑うのでした。それで、私は従兄がそう言って笑うのを待っていました。

 が、彼はそのまま背を向けると、知らん顔して私の側から離れていく様子です。これには私の癇癪が頭をもたげました。

「一寸待って、お兄ちゃん。」

『冗談なら冗談と言ってくれればそれで済んだのに。』そう思いました。「あの太陽が誰かの物だって言うなら、」

「誰の物なの?」

私はそう言って彼を呼び止めると、このままで、驚かされたままで、後から冗談でしたも無い、騙されて悪ふざけされたままでは済まさないわと、きっ!と身構えるのでした。私はこれから従兄と問答する為に確りと心の準備を整えると、負けないわよ!と従兄のその背を見詰め思うのでした。


土筆(78)

2018-05-22 09:39:00 | 日記

 彼は再び彼女に向き直り勿体ぶった様に言いました。

「もうあれは他の人の物だからね。君の物にはならないんだ。」

というような、彼女が思いも掛けなかった驚くような事を言い出しました。そして、自分の言葉に呆気に取られ、ポカンと口を大きく開け、つぶらな瞳で一心に自分を見詰めたままの彼女の顔を見て、してやったりと思うと、笑いが堪え切れなくなりぷっと横に笑いを吹き出しました。

 『ねんねは皆同じだな。』と、自分の妹に同じ場面で、同じ事を言った時の事を思い出しました。『妹の時も度肝を抜かれた様に呆気に取られていたけれど…』と、その時の顔を思い出すとクスクス笑いが止まりません。口に手をやって笑いを引っ込めようとすると、彼はうううと、目をぱちぱちさせて涙目になってしまいました。

 一方私は従兄の言葉に相当ショックを受けていました。『もう他の人の物。』従兄の言葉を心の中で繰り返してみます。が、直ぐには意味が呑み込めないでいました。『太陽が他の人の物、そんな事が?…』、頭の中がもやもやして物事が何も浮かんで来ません。私は何が何だかさっぱり訳が分かりませんでした。少し落ち着くと、太陽が人の物になるなんて言う事があるのだろうかと不思議に感じて来ました。確かに、少しまでは私の太陽などといって、自分の物だと思っていましたが、従兄に君の物じゃないとか、人の物だと言われると、そう言った従兄に対しての反感が湧いて来たのでした。そうすると、自分の事は棚に上げて、手の届かない所にある、人でも生き物でもない太陽が、如何やって人の手に入れられて、その人の物になるのかが納得できない事に思われて来ました。自分で考えたこの考えがよく分からなくても、彼に対する反抗心が勝った私は「太陽は人の物にはならない物だ」と結論するのでした。それで、従兄の言葉を確認しようと、眉根に皺を寄せて従兄に尋ねるのでした。


土筆(77)

2018-05-22 09:38:03 | 日記

 『そうだ、金色を私の一番好きな色にしておこう。』

私はこの瞬間そう確りと決めると、うんとばかりにお日様を見詰めて頷きました。そして目を細めると太陽を指さし、自分の決意を表明する為に「お日様大好き!」「金色大好き!」と大きく口に出してにっこり笑いました。

 と、丁度その時です、湧いて来た疑問を確かめようとして、今年ガキ大将になった従兄が叫んでいる彼女に近付いて来ていました。そして、彼女の言葉を聞き取り、そのふやけたような幼い笑顔を見て取ると、片方の眉毛を吊り上げ含み笑いをしました。その後彼は、急に彼女の言葉に引き込まれたようにすいっと彼女に近付くと、

「…ちゃん、君もしかしたら、太陽を自分の物だと思ってない?」

と如何にも神妙な顔をして尋ねるのでした。

 勿論彼女はこっくりと頷きました。その後も彼女は夢見がちな瞳をしてその目に夕日を映すように見詰めながら、「お日様がね、」そう言うと、「私に味方してくれる、とても綺麗なものだと気が付いたから。」と嬉しそうに、たどたどしく自分の気持ちの変遷を従兄に説明するのでした。

 彼が如何にも年上らしい素振りでふんふんと頷き従妹の説明を聞き終えると、彼女はここで感極まったというようにほぅっと溜息を吐きました。

 「それでね、私、世界で一番太陽が好きなの。」

彼女はあどけなく幸福そうな笑顔を頬に浮かべて従兄の笑顔を見詰めると、彼の理解を得る為に口にしました。すると、従兄はふんふんと頷き、笑顔のまま訳知り顔で、さも意地悪そうに彼女に言いました。

「でも、太陽は君の物じゃないよ。」

君の味方でも無いし。それに、太陽は、奇麗は奇麗だけど…、と、彼はそこで言葉を切って一旦彼女から顔を背けました。この先彼を待ち受けている可笑しさを予想すると、彼は堪らなく可笑しくなり、胸に湧いてくる笑いを堪えながら、心の準備をする為に少し時間を置いたのでした。


土筆(76)

2018-05-21 10:54:31 | 日記

 私はいとこ達の不穏な雰囲気を感じていました。しかし、自分の関心を上空の太陽から離す事が出来ないでいました。見るとも無しにちららちらと太陽を見詰めながら、この太陽自体の色、光の色は何という色なのだろうと考え始めました。考えては見上げ、思いあぐねては見上げしている内に、何時までも続くと思っていた日光の輝きが衰えを見せ始めました。私は眩しさをそう苦にする事無く太陽本体を見る事が出来る様になった事に気付きました。

 私はおやっと思いました。そして、お日様を見詰め続ける事が出来る様になった事に嬉しさが湧いて来ました。やっぱり太陽も私に見てもらいたいのだ、そんな風に思うと私の喜びも一入という感じになりました。私は素直に感情を面に出すと、にやにやにやけてお日様を見詰めました。

 その後日輪は大きく広がって見え、揺らめき燃え始める寸前には、はっきりとした朱色を帯びて来ました。私は眼前の太陽の変化を余す所無く眺めようと、より一層気持ちを込めて見つめ続けるのでした。

 太陽が顔を出し、私がその正体を実際に知り、見詰め始めてからほんの僅かな時間の経過でした。その間に目に弾ける白金にまで輝いた太陽は朱を帯び、その色は温かみを帯びた親しみのある金色(こんじき)に変わりました。私はこの色に覚えがありました。色紙の金色です。

 『お日様って金色なんだ。』

そうだ、正にその色だと私は合点しました。過去に色紙の金色を見た時にも思った感情です。とても奇麗な色だと私は思いました。お日様ってとても奇麗だなぁ。そして暖かいなぁ。きらきらとして特別奇麗な物だ。素敵だなぁ。『私お日様って本当に大好きだな。』そう思うと、『世界で1番大好きな物だ!』と感じました。そして私が素敵だと思うように世界中の人も皆太陽が大好きだろうという事に考えが及ぶと、つい自分と比べてしまいます。私は、太陽っていいなぁ、と、皆に好まれる太陽をとても羨ましく思うのでした。胸の奥から止めど無く溢れ出す太陽への憧憬を感じると

「お日様っていいなぁ。」

口に出して言ってみます。