Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

土筆(234)

2018-10-23 09:50:33 | 日記

 それが、つい先日、何度か尋ねる蛍さんが煩くなってきたのでしょう、父は、まぁ、分からなくてもいいかと、「話だけだが」と前置きするとこう話し出したのでした。

 「お父さんはこうやって、1人孤独を噛みしめているんだ。」

孤独だよ、こうやって1人だけで、世の中には自分以外他には誰もいないという事だ。こんな風に自分が世の中に1人だけでいると感じる事を、孤独と言うんだ。孤独で寂しいなぁと、寂しさを感じるている事を、孤独を味わう、孤独を噛みしめると言うんだ。と言ったのでした。

 ふうんと、1人だけでいる事ぐらいは分かる蛍さんでした。が、父の子供である私が傍にいるのに、何故父が1人だと思うのか?、孤独だと思うのかが分からない蛍さんでした。

「お父さんは1人じゃないよ。子供の、お父さんの家族の私が傍にいるでしょう。」

と、「だから孤独じゃ無いんじゃないの。」と、これは蛍さんが父に言った言葉でした。それに対して父はやっぱりと言うように横目で娘を見ると

「物質的な物じゃ無くてな、精神的な、心の問題なんだよ。」

と、彼は娘に言ってみるのですが、そう言ってもこんな子供には分からないなと、最初から彼自身思っていましたから、自分ながらに子供に生真面目に話した事が可笑しくなって来ました。彼はくすっと笑顔になるのでした。子供の手前も元気になって見せようと思い、

 「そうか、お父さんはお前がいるから1人じゃ無いな。」

そんな事を言って思わずほろりと涙ぐんだりしたのでした。


帽子

2018-10-23 09:43:54 | 日記

 近年購入した冬用の帽子が、私が持っている冬のファッションで一番お洒落な物です。婦人帽です。厚手の暖かい防寒用のハットです。つば有り帽、つば広帽と言うにはちょっとこじんまりした帽子です。年配者向けで落ち着いた感じです。割合気に入っています。

 


土筆(233)

2018-10-22 09:39:37 | 日記

 茜さんが手を差し出す前に、その時私は何をしていたかしら、蛍さんは考えてみました。

 『先ず部屋に入って来た茜さんを思い出して、と、それからと、私に茜ちゃんは一人でこんな所で何をしているのかと聞いたのよ。』それで私は、

「孤独を噛みしめている。…と言ったんだったわ。」

と、蛍さんは回想しながら自分の言葉を思い出してみました。そして思わずその時の口調で独り言を漏らしていました。そうよ、私はお父さんが時折公園でしていた様に、草原に腰を下ろす格好で畳に座り、1人で孤独を噛みしめていたのよ。…。蛍さんは引き続き公園の風景を連想しました。

 ある日の午後の事です。父と一緒に何時も散歩に行く公園で、蛍さんが一人遊びに飽きて父の様子を見に行くと、父は草原に腰を下ろしてしょんぼりしています。その日に限らず、父はベンチに座ってじーっとしている事も有り、手や足など動かさず、遊んでいる様子も無く、考え事をしているという雰囲気でもない様子です。

 父は唯項垂れて、時には目を閉じている時もありました。そんな父に、『お父さんは何をしているのだろう?』と彼女はとても不思議に思うのでした。勿論、大人が手足を動かして遊んでいる様に見えても、決して遊んでいる訳では無いのですが、する事が無く、手持無沙汰で暇潰ししているという行為を、見る物皆全てがまだ興味の対象となる子供の目には理解出来ずに、父はああやって遊んでいるのだとだけ写っていた訳です。

 それが、何もしていないで、話しかけても答えを返す事無く、ぼーっとしたまま、しかも、赤い目で何だか沈んだ風情でいる時もあるのです。子供心にも蛍さんは酷く父の様子が気になっていました。それで彼女はそんな様子でいる父を見ると、何回か如何したのかと熱心に聞いてみたのですが、

「お前に話してもなぁ」

と、漸く我に返って気が付いた父は、こう言うばかりで何の答えも返してはくれないのでした。


土筆(232)

2018-10-20 09:29:26 | 日記

 「お祖母ちゃん、私の事信じてくれるの?。」

蛍さんは驚いて思わずまじまじと祖母の顔を見上げました。祖母はああそうだよと言います。

「お前は何も持って無かったからね、家にもスルメは無かったんだ。」

 外から帰って来た時、お前はスルメどころか何も手に持って無かったよ。お祖母ちゃんは見てたからねと、祖母は真面目な顔をして蛍さんに話すのでした。

「茜もスルメなんか持って無かったんだろう。あの子も家に来る時、手に何も持って無かったよ。」

服にポケットはあったけど、スルメが入っていればすぐに分かったさ、臭いもしなかったしね。祖母は思い出すように蛍さんに話して聞かせました。祖母はきちんと孫たちの様子を把握していたのでした。それでと祖母は蛍さんに問い掛けました。

「まま事遊びをした時の事を詳しく話してごらん。」

 そこで蛍さんは話しだしました。あれこれと、茜さんが最初に始めたのだと、順を追って時間の流れ通りその通りに話して行きます。祖母には何故茜さんがスルメを話に持ち出したのかが不明なのでした。

「何で茜はスルメなんか言い出したんだろうねぇ。」

彼女は呟きました。その独り言を聞いた蛍さんは、お祖母ちゃんは何か分からなくて困っているのだと感じました。私も一緒に考えてあげようと思いました。スルメを言った時の茜さんの様子、その前に起こった出来事を思い出してみます。


土筆(231)

2018-10-20 09:18:42 | 日記

 多分蛍の言う通りなのだ、この子は手に何も持っていなかったのだろう。と祖母は結論を出しました。何しろ、その時家には何処にもスルメなど無かったのですから。祖母は知っていました。

 外から帰って来た時の蛍さんは手にスルメなど持ってい無かったのです。また、その時彼女が来ていた服にもスカートにもポケットはついていませんでした。その時の孫の状態や家の状態を、祖母はよく把握して覚えていたのです。孫が何か持っていたとしても隠しようはありませんでした。元々孫に聞かなくても彼女は真実はそうだろうと思っていましたが、蛍さんに念のため確認してから、孫娘達の事の真相を究明しようと思ったのです。

 「何処からスルメが来たのかしら?」

考える内に、ついぽろっと一人事を漏らしてしまった祖母です。蛍さんはハッとすると、又スルメの件かと、思わず嫌な顔を祖母に向けました。祖母が何か言い出す前にと思い彼女は口を切りました。

「お祖母ちゃん、スルメなんかホーちゃん持って無いから。」

祖母はああと、ふと我に返ると、スルメの言葉を口にしてしまった事を悟り後悔しました。

 彼女は問題になっている物の名前を言わずに真相を究明しようとしていたのでした。口から出てしまったものは仕様が無い。彼女は思い直すと、孫に言いました。

「それは分かっているよ。お前は何も手に持ってい無かったからね。」

祖母のこの言葉に蛍さんはとても驚きました。何しろ、自分の言う事を信じてくれない父に、スルメが如何、持っていただろう、等あれこれ散々言われて嫌な思いをし、大泣きした後の蛍さんです。祖母もその事で自分を責める為に話しをし出したのだろうと彼女は思っていました。