それが、つい先日、何度か尋ねる蛍さんが煩くなってきたのでしょう、父は、まぁ、分からなくてもいいかと、「話だけだが」と前置きするとこう話し出したのでした。
「お父さんはこうやって、1人孤独を噛みしめているんだ。」
孤独だよ、こうやって1人だけで、世の中には自分以外他には誰もいないという事だ。こんな風に自分が世の中に1人だけでいると感じる事を、孤独と言うんだ。孤独で寂しいなぁと、寂しさを感じるている事を、孤独を味わう、孤独を噛みしめると言うんだ。と言ったのでした。
ふうんと、1人だけでいる事ぐらいは分かる蛍さんでした。が、父の子供である私が傍にいるのに、何故父が1人だと思うのか?、孤独だと思うのかが分からない蛍さんでした。
「お父さんは1人じゃないよ。子供の、お父さんの家族の私が傍にいるでしょう。」
と、「だから孤独じゃ無いんじゃないの。」と、これは蛍さんが父に言った言葉でした。それに対して父はやっぱりと言うように横目で娘を見ると
「物質的な物じゃ無くてな、精神的な、心の問題なんだよ。」
と、彼は娘に言ってみるのですが、そう言ってもこんな子供には分からないなと、最初から彼自身思っていましたから、自分ながらに子供に生真面目に話した事が可笑しくなって来ました。彼はくすっと笑顔になるのでした。子供の手前も元気になって見せようと思い、
「そうか、お父さんはお前がいるから1人じゃ無いな。」
そんな事を言って思わずほろりと涙ぐんだりしたのでした。